2020年7月アーカイブ

CRF150Rの2020モデル化メンテナンスですが、エンジン組み立て完了しフレームに載せたところで中断です。

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12モデルからピストンと燃焼室が変更であることは分かりましたが

他にもキャブのオーダーがMJ#138から
#140に変更

ECU(コントロール・ユニット)が変わっているようです。
これはデジタル信号の進角か遅角特性の最適化を図ったものと考え、20化に必要な部品です。
現行車にも関わらず在庫なし
納期8月末なので、これから生産なのかな。(21モデルのロットかもしれません)

というわけで乗り出しは9月以降にします。


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革ツナギ、オーダーしておきました。
マン島TTレース参戦中の山中さんからの紹介で目黒区のセクレテール製です。

山中さんはモトクロスやミニロードの平日練習でお話しする機会があり、お勧めしてもらった経緯です。

学生時代、地元のオートバイ仲間と小豆島へ
かっ飛びツーリングに行ったときのこと

高松港からフェリーで渡り、上陸して10分も経たないうちに左コーナーで転倒。
布ツナギだったので左ひざの肉が削れて
骨が見えてました。

後続のGPZ400も転倒して縁石にぶつかって鎖骨骨折、
先頭走っていたCB750Fは異変に気付いてUターンに失敗しガードレールに突っ込んだ。

3人とも救急車、警察の現場検証があって
壊れたオートバイ3台共警察署で保管。
その日は750Fのお父さんに車で迎えに来てもらって乗せて帰ってもらい、
壊れたオートバイは後日トラックで引き取りに行ったという、苦い経験がありました。
あのとき、膝カップ付きの革ツナギだったら膝の肉削れないで済んだはずです。
壊れたホーク2はフロントフォークとハンドルくらい直して復活しましたが、就職の時期に友達にあげました。
その後89年にNSR250買うまでオンロードバイクは乗っていません。
NSRも3年くらいで乗らなくなって手放し、またオンロード離れの生活に戻りました。
そして2014年旧車のCJ360Tに乗り始めたのですが、おっさんはレトロなバイクでいいかなと思ったがそうはいかず
ついに2018年、ZX10Rご成約となりました。

若いころほど無茶な走りはしないですが、無転倒で過ごせる自信もないので装備くらいはチャンとしようと思った次第です。
サーキットではMFJ公認か脊椎パッドが必須のとこが多いです。目の前で転倒されたら避けられるかどうかは運次第です。怪我は自分持ちなんで、乗るなら当たり前のことかなと思います。
W1スクランブラーのコマキさんから2年も前から頼まれていたスタンドです。
地上高が低く、車重が重い車体ですから、市販のオフロード・スタンドで使えるものはありません。
コマキさんは大工なので、玄関の破風板を取り替えてもらう工事を頼んだタイミングで
W1を持ちこんでもらいました。

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二日掛かりで、簡単ではなかったですが
完成にこぎ着けました。

リヤタイヤ持ち上げた状態です。

地上高200mmから80mm持ち上げる設定です。
これでタイヤ交換などの整備が迅速にできるでしょう。







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スタンドかける位置をエンジン下部にすれば
フロントタイヤが持ち上がります。

持ち上げるのも重くないし満足満足。

強いて不満を言えば
リンク機構が捻じれたり、角パイプが凹まないように十分な補強を入れたため
重量があることですね。

それでも片手で持ち運べるくらいです。



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これはリンクが振動などで戻って
スタンドが下りてしまうのを防ぐ安全装置です。

ピンを足で押し込んでストッパーをかけます。

W1倒れたら大惨事ですからね。






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重たい車体を軽々と持ち上げるための
レバーは運搬の邪魔になることを想定して

角材を差し込む脱着式にしましたので
スタンド本体はコンパクトに収納できます。








150でレースしなくなって、早いもので8年経ちました。
メンテナンスノートの記録が2012年が最後でしたから。
前の記事で2020モデルに乗ってみたら、明らかにチョット違うと書きました。
それで思い立ったエンジンオーバーホールです。「20モデルと同じにしたい」

パワーに影響する部品は総取り替えです。
クランクシャフト、4軸のベアリング、ピストン、シリンダー、シリンダーヘッド、カムシャフト、IN・EXバルブ
部品代は15万円ですが、新車の3割くらいの出費で同じ走りなら悪くないと思いました。

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4軸のベアリングは左右のケースから抜き取り、ケースをストーブで温めて
ベアリングの自重で落とす焼き嵌めです。
圧入面に僅かな傷で軸芯が狂うのを防ぐ方法です。
ケース内のゴミは完全に除去しないと仕上がりが違ってきます。


組立てより前処理の時間が圧倒的に長いですね。
自分でやるから工賃はゼロですが深夜残業代はでません。


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20モデルが10モデルと違っていた理由が分かりました。

ピストンと燃焼室形状が変更されていたのです。
品番でみると12モデル以降が現行のピストンとヘッドで共通です。

カムシャフトも変更ですが、これは旧型カムシャフトのリコール対策品を適用したものでしょう。
初期型は鋳造カムシャフトでしたが
市場で折れるトラブルが出て製法が改良され強度保証されたと思います。
カムプロフィールは共通なのでパワーに影響する変更ではなかったです。

左がNEWヘッド、右が10モデル。
10モデルの方が燃焼室が狭いのですが、NEWピストンの頭が高く、新型はそれを逃がす形状で
燃焼室が拡大されている様子です。

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左のNEWピストンはインテーク側のバルブリセスが広い面積であることが分かります。

そのためピストンの最頂部が高いのですが
インテーク側の斜面を利用して吸気のスワール(縦渦)を生み出す効果があると思われます。
混合気のスワールは燃焼効率に寄与する効果でパワーフィーリングを改善させているでしょう。

何より人間テスターとしての能力が腐っていなかったことで安心しました。



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燃焼室だけでなく、ピストン裏側のデザインも興味深いです。

左がNEW、右が10モデル

NEWタイプはスカートが少し拡大され
首振り対策されています。
同時にピンボスとスカートを繋ぐリブが内側に寄せられ剛性アップに寄与していると思います。
ピストンは燃焼圧力をピストンピンで受け止めるのでピンボス周りの強度が低いと頭頂部の真ん中から割れてしまうのです。
ピストンのクラックは最もエンジンブローの原因として多いトラブルなので
補強されていると安心して酷使できます。

2ストトレール車のエンジンを125クラスのロードバイクに換装した場合、販売されている車種の
チャンバーを流用することは不可能ですが、切った張ったで改造して取り付けておられるのを見かけます。
当然そのエンジンのスペックには合ってないはずですが、それでも取り付いて走ってしまうのが
面白いですね。
どうせ作るなら、そのエンジンに合ったスペックのチャンバーにすれば本来のエンジンキャラクターを
発揮できると思うのですが、今回の場合はどおでしょう。

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125オンロードバイクの車体はコンパクトですから、200クラスのシングルエンジン用チャンバーでは長すぎて、通常のダウンチャンバー形状では収まりません。

そこでエキパイ部分をクネクネとカーブをつけて距離を稼ぎ、小さい車体に納めるのです。

チャンバーのスペックは、そのエンジン専用の寸法で形状を車体に合わせて取り回ししますが
一発で形状決まることはありません。
エキパイ形状を変えて何回か仮組みして検討したのちに決めています。


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チャンバーの形状はサイレンサーをどの位置に持ってくるかで違ってくるので

サイレンサーも作っておいて実際に取り付けてみないとわかりません。

なるべくフレームからはみ出さない形状で
パイプのスペックを守りながら、このような形状になりましたが
改造車ですから、ダウンチューブの前にマウントされたラジエターや
ブレーキペダル、リヤフォークなどのクリアランスを適切にしなければならないので、エンジンは同じでもエキパイの形状は毎回違う物になります。

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サイレンサーはお客さんの要望でカーボンパイプにしました。
通常のアルミパイプに比べて、材料代6千円だけ高く1.8万円。

パイプエンドが、これも特注で外径の太いものにしてあります。
中身はテールパイプに合わせた内径なので
ノイズはそれほど大きいものではありません。


いつも理想は暇な状態にしておいて、ご注文があればただちに作業にかかれることです。
理髪店や食堂はお客さんが来たらすぐ注文を取ってサービス提供しますね。
次にお客さんが入ってきても取り掛かっているサービスが完了するまで待たなくてはなりません。
同時に二つ以上のサービスはできません。
大会社なら大勢の従業員と大量生産設備を駆使して同時進行で大量の注文をこなせますが
個人商店ですから生産力は一人分しかないのです。

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6月時点で15件ほどバックオーダーになっていますが
お客さんの殆どは「大体の納期は?」
と質問されるので
こちらとしても根拠のない納期をお知らせして完遂できないと取引にならないと考えてますので
なるべく予定通りに進めたいですが
思ったように事が運ばないので
日程が確実になったころに、お客さんに連絡して生産開始するようにしています。

いまのところ半年も先にはならないですが
長い人は3か月くらいお待ちになると思いますので、弊社ラインナップ品や特注の依頼を検討中のお客さんは9月ころまでお待ちになって連絡いただければ、今より空いている状況になっているのではないかと思います。

すでに受注確定している作業は順番に進めておりますので作業開始の連絡をお待ちいただきたいと思います。



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2010年に新車だったCRF150Rですが
3年くらいレースで使いましたが
最近は年に1,2回くらいしか乗りません。
(乗り物いっぱいあるからね)

途中でオーバーホールしているので
いい調子と思っていたのですが
2020年の新車借りて乗ってみたら
ちょっと違う、明らかにちょっと違う。
新しいエンジンの方が元気がいい。

これはちょっと捨てておくわけにはいきません。ムラムラとジェラシーが湧いてきて
150の新車なんかほしいと思わないですが
エンジンをリニューアルして同じ走りにしたい!
そんな願望が持ち上がってきて、可能な限り新品部品で組み直すことにしました。
来月に愛媛の山へ持っていく予定なので、今からやっておけば余裕で間に合うハズデス。

まもなく60代を迎える年齢になって将来の目標を定めることに意味はないわけですが
人と競争することに興味はなくなり、確実に落ちていく体力を食い止めるために
70歳になっても15メートルぐらいのダブルジャンプはためらわず飛びたいと思っていますね。