2014年3月アーカイブ

ここに2種類のベアリングがあります。DT125から外したものですが、クランクサイドの左右でサイズもメーカーも違います。何でなんでしょう。
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ベアリングはJISで規格化されていますのでメーカーが違っても名番が合えば使用可能です。
左はL側ケース用で名番6205、Koyo製
右はR側ケース用で名盤6304 C3、NTN
左右でベアリングメーカーが違う理由は同じ車種でも2社手配していることです。
2社でコストや品質を競合させる目的と、1社の供給が間に合わないときに、もう1社で賄えるというバイヤー側のメリットがあるわけです。
因みに、このエンジン装着だったKoyo製が取り寄せたヤマハ純正部品はNTN製になっていました。
国内有名メーカーは
NTN(以前NTN東洋ベアリングと呼んでいた)
NSK 日本精工
Koyo (以前光洋精工、今JTEKT)
NACHI 不二越
などです。ラジアルボールベアリングの外輪側面に刻印を見たことがあると思います。
ベアリングといえば非常に硬い部品という印象ですが、オートバイ部品のなかで最も硬い材質であります。軸受け用材料はSUJ2を使いますが金型用のSKDに等しい硬さで比較的安価な材料でもあります。SUJ2は成分系から高炭素クロム鋼であることがわかりますが、内輪外輪はパイプを切断し、熱間鍛造で、球は丸棒切断したものを平ダイスで転がして真球を作ります。
形状が整ったら熱処理します。焼き入れ焼き戻しですが、焼き入れ(クエンチ)は鉄の変態(トランスフォーメーション)を利用して硬化させる処理です。鋼中の炭素量に応じて800度以上に加熱するとマルテンサイト変態が起こります。この温度を保持したまま油中で急冷(オイルクエンチ)します。水でなくオイルで焼き入れする理由はオイルの方が比熱が高い液体であるからです。
焼き入れ後のマルテンサイト組織は非常に硬く、ロックウェル硬度Cスケールで65以上ありますが衝撃で割れてしまう性質があるので粘り強さを出すために焼き戻し(テンパー)します。およそ600度で2時間保持すると微細なソルバイト組織に変態して硬度は60まで下がりますが靭性が高くなり実用強度が増します。
内輪外輪、球とも同じ熱処理を施したあと砥石研磨で寸法精度を高めます。ベアリングに不良品が殆どみつからないのは、寸法全検で規格に適合したものしか製品化されないためです。通常1万個が製造ロットと言われますので少量生産が不可能なことも特徴です。(ワンオフのベアリングは有り得ない)
6304とか名番のあとにC3というボールとレースの隙間(クリアランス)を示す表示があります。数字が小さい方が隙間が小さい意味ですが、隙間が小さいとガタも小さいのですがボールとレースの接触面が増えてしまい、転がり抵抗も増える結果となります。
従って接触面が少なくなる隙間の大きなベアリングがエンジンの回転にとっては有利となりますが大きすぎると往復運動のレシプロエンジンにとっては振動になってしまうので、C3かC4を採用するエンジンが殆どです。
ボールとレースの摺動部は金属接触では直ぐに磨耗して寿命が短くなるためオイル潤滑が必須です。
ベアリングに潤滑目的でグリスを封入する場合がありますが、サイドシール付きなら効果あると思いますがオープンベアリングの場合は無駄だと思います。グリスは荷重を受けてはみ出しますし、グリスが障壁となってオイルの潤滑を妨げてしまうため、頻繁にグリスの交換ができない場所にはメリットが無いだろうと考えています。
2サイクルの場合は混合油からの潤滑しか供給されないため、新品ベアリング組んだときは、混合オイルをボールとレースの隙間に給油して馴染ませてから組み立てするようにしています。

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2サイクルのクランクシャフトはベアリング内輪に圧入になります。
自作のクランクシャフトインストーラーを使っています。
サービスマニュアルには純正の特殊工具を使うようになっていますが、
用途と目的が分かっていれば特殊工具を買ってくる必要はありません。
ケースとクランクウエブの隙間がゼロにならないようにシックネスゲージで0.5mmくらいに調節します。
片側軸を引っ張りで圧入することでクランクに傾きが生じることを防止します。

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クランクシャフトインストーラーの構造はこのとおりです。
フライホイールのナットを利用して引っ張っています。シングルエンジンならこれ一つで65ccから450ccまで使えます。
実はエンジン組み立てを習ったことがないのでプロの整備士の人が、どのようにやっているかは知りません。
サービスマニュアルも持っておりませんのでいちいち考えながらやっているわけですが
構造は勿論、部品の材質や製造方法にまで思いを馳せながら組み立てるようにしているのは製造屋の本性というものかも知れません。

空冷DT125ですが、同じ79年製YZ125スペックでチャンバー作った件の続き
試乗してみたら、一般道走行にはそぐわない高回転型のエンジン特性になってしまい中止を促したもののオーナーは自走で乗って帰ることに
エンジン寿命は短くなることは予想しましたがピストン溶けるまでは思いませんでした。
割と近距離だったため故障したDTを取りに行ったために、直るまで再び預かることになりました。
これを教訓に旧車の預かりはしない、やむを得ない場合でも自走で乗って帰る車両の改造はやらない、ということを肝に命じました。
不測の事態に責任が負えないからです。
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さーてエンジン下ろす段取りができました。

DT125は15、6歳ころの通学車両人気NO・1だったので高専の駐輪場にいっぱい停めてあったのです。
自分は持ってなかったですが時々借りて乗ったことがある程度です。
もちろんエンジンなんか触ったことありません。
まさか35年も経ってこのエンジンを直すことになろうとは夢にも思いませんでした。


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溶け落ちたピストンは少量の粉になっていましたが、そのまま放置するとクランクベアリング周りに問題が生じる可能性があります。分解洗浄して、ベアリングを手で回して抵抗が無いかどうか確認します。
アルミの粉は柔らかいですからリテーナーに噛みこんでロックすることはありませんが、異物として残っていると発熱の原因になりますのでしつこく洗浄して、手で回転を繰り返します。
部品にダメージは無いので支給されたベアリングとクランクシール以外は再使用です。


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今回のトラブルとは関係ないですが、シリンダーに傷がありますので0.5オーバーサイズのピストンに交換するためボーリングにだします。
80年代狭山レーシングのころからお世話になっている井上ボーリングさんへ持ち込みです。
当時は新品シリンダーを最初から0.5オーバーサイズにボアアップしていました。
認められた排気量アップでした。
会社終わってから井上ボーリングの工場入り口に依頼書とシリンダー、ピストンを置いておけば3日後くらいに出来上がっていたという迅速さでした。
最近はどうでしょう。

3月は2戦ありましたMCFAJモトクロスですが、前回はエントリーしておきながら前日に体調不良に襲われ棄権しましたので、今回が今年初レースとなります。
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場所は今回のレースを最後にコース終了となりますMX408
完全ドライコンディションで埃対策に散水しながらの運営でした。
結果からですが私のE450、E250(実質ヒート1、ヒート2)は4位、3位ということで
フルサイズは表彰台に乗ったことがなかったので良かったですが、内容は抜かれてばかりの順位キープだったので悪いです。
2スト時代の癖で低いギヤでエンジン回転を引っ張ってしまうので車速が伸びないことと
体力不足に体格のハンデもあって、自分的にはこんなもんだろうと思っています。

フルサイズ参戦当初から掲げていた目標は達成できました。5年落ちのキャブレター車で新型の前を走る、ということだったですが
2回ともホールショットでオープニングラップだけトップ走れました。スピードがないので抜いてくるライダーを無理におさえようとせず、安全にレースさせてもらいました。
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GP、SEクラスのスタートグリッド。
久しぶりに見た田淵武選手は今回KXで出走でした。ベテラン大塚忠和選手と今年IA2参戦の伊田選手という3大元ワークスライダーと今年からIA1参戦の若手現役A級大西竜之介が2ストRM250が対決するという豪華な内容です。
結果は二つのヒートを大塚と大西で分けましたが、ヒート2の序盤は伊田さんが250Fでトップ独走して、来月の全日本に向けて仕上がりも上々というわけで、観戦も楽しかったのであります。

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私のスタートシーンはフォトハンターさんに撮っていただけたようなので、仕上がりが楽しみです。

ホールショット男の伊田さんはこの時点で足がステップに乗っています。
マシン真っ直ぐにしてトラクションを得る極意でありましょう。
ジャパンVET(5月5日オフビ)もお誘いいただいたので久しぶりに行ってみようと思います。




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預かり車のKR250ですが発売から30年も経過している割には非常に綺麗に保存されていて、オーナーの愛着の度合いがわかります。
しかし、さすがに外観からは分からない老朽化も進んでいるようで
固着したフロートバルブや詰まっていたジェット類も掃除してエンジン再始動しましたが、不調は解消できていません。
そんな状況ですが駐車中に奇妙なものを発見しました。
4本のビニールホースは2個のキャブからエアブリードとオーバーフローパイプが1本ずつです。
その1本の先端に白い花咲がみられます。
ガソリンタンクかキャブに結露した水分がガソリンと反応して出てきていると思ったのですが、どうやら違っていて花咲が発生するメカニズムは次のとおりと考えました。
ガソリンが時々漏れてきています。負圧コックですからガソリンが降りてくるということは、ダイアフラムが硬化してシール性が落ちていることと、フロートバルブが完全に効いていないのでオーバーフローしてきている証拠になります。
そこでオーバーフローパイプの先端から漏れたガソリンから気化熱が発生します。
するとホース先端が冷却され、空気中の水蒸気が結露(液体に変わる)してガソリンと混ざり乳化したものが花咲の正体である。
雨降りのような湿気が多いときに走行するとスロットルバルブにアイシングが起こりますが、それと同じ原理ですね。
通常はホースが冷える前に常温に戻りますから、オーバーフローが一定時間継続していて、外気温が低く湿度が高いといった条件が揃ったときだけ発生するようです。
屋外ならホース先端に埃が付着している場合もあります。
オートバイは金属部品の集合体ですが、絶えず自然環境に曝されていて、状態が変化していくことを長い時間を経過することで知らされることがあります。
もちろんオートバイメーカーは30年以上も車両のコンディションを維持することは想定しておらず
常に毎年の新車を多く販売することが仕事でありますから、維持する人の経験と労力がなければ残っていかないのだろうなと思います。
消費税増税まで2週間を切ってしまいました。この時期に20年間維持してきた価格を改定させていただきたいと思います。
チャンバー、マフラー等弊社ラインナップ品は内税方式で価格を提示してきました。
業販につきましては割引した価格に消費税付けていただいておりました。
もともと採算ベースぎりぎりのところ材料費は高騰の一途、この上消費税アップでは事業の継続に
支障を来たすため、この段階で業販は終了させていただくことを決意いたしました。
長い間ご利用ありがとうございました。
古いラインナップ品につきましても、治具の管理が困難になってきましたので、3年間を目安に需要のなかった商品の治具類、寸法データ等を廃却して作業スペースの確保をしていきたいと思います。

さて具体的な新価格ですが、いずれ消費税10%に移行されることは確実なため、それまでの暫定的な数字でありますが、従来の5%は価格に組み込んだ(実質消費税分サービス)金額でありました。
4月以降御注文分からは増税分3%を追加した金額にいたします。
エキパイ¥20000⇒¥20600

チャンバー¥25000⇒¥25700

サイレンサー¥12000⇒¥12300

4ストサイレンサー¥47000⇒¥48400

つり銭が面倒になりますので10円代は切り捨てになっております。
上記金額を総額表示で運営させていただきます。

ワンオフ特注品の依頼につきましては、型代、レイアウト検討費用等、¥10000別途は従来とおり維持したいと思います。
実はこの型代、レイアウトが品物製作以上に時間を費やすところなので時間当たりの収入が少ない要因になっておりますので、よほど重要な理由が無いかぎりお引き受けしない方針にしますので、ご了承ください。

旧式車の型合わせのための預かりも一定の条件つきで止めさせていただきます。
その条件とは、試運転が必要な車両に故障がある場合はお引き受けできません。
長期間保管を避けるため、ご依頼時から1ヶ月以内に作業開始できる見込みが無い場合は
業務予定に見通しがつくまで、預かりはいたしません。
預かり期間中に車両に問題が生じた場合は、お客さんに確認していただく場合があります。
随時来て頂くためには首都圏以外の遠方からの車両預かりもお断りさせていただきます。

まるで業務縮小のための改定と思われますが、3ヶ月にも及ぶバックオーダーによって折角楽しみにしておられるお客さんの気持ちを考えると、これを解消していくことが命題であると考えておりますので
生産にマイナスな要因を排除するための方針とさせていただきます。

当面の目標としましては2014年モデルのチャンバーかマフラー、3機種ほどラインナップに加えるため試作を行っていきます。
すでに要望も来ておりますし、テスト車両貸し出しの約束も取り付けてありますのでレースシーズン途中でありますが完了できた物から当ブログで公開させていただきます。

今回の修理方法を公開したのは、見知らぬお客さんからの依頼に応える目的ではありません。
貧乏くさく修理などせず、新しいエキパイを購入していただくことが2輪業界、アフターパーツメーカーにとってプラスになると考えているのです。実際、メーカー純正品、社外マフラーの販売元による修理は一切行っていませんし、整備士の正当な修理方法としては部品交換しかないわけであります。
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それでは、何故このエキパイの凹みを修理したかというと、依頼者には幾度となくお世話になっていること
これが無限というメーカーの品物で数に限りがあるという2点が理由であります。

凹んだエキパイ単品を送られて来ましても修理過程でパイプが歪みますから歪みの修正が必要ですが、車体合わせ無しでは確認もできません。
安い修理代で直れば喜ばしいことですが業界としてはデメリットになりますので、修理方法は公開しましたから、直したい人はご自分で努力してみてください。
おそらく大半の人は部品買った方が楽だということに気づくでしょう。
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パイプの前後を治具で蓋をして窒素ガス封入します。
圧力は10kg/cm2くらいが妥当でしょう。
酸素でなく窒素の理由は材料の酸化を少しでも防ぐ目的です。
パイプを加圧した状態で凹んだ部分を板金ハンマーで軽く叩きながら均していきます。
殆ど目立たない程度に修復できていますね。
パイプの曲げRが若干外に開きますので
内側に曲げ戻せば取り付けに問題は無くなります。

2輪レースでもロードとMXは異質なものだと思っています。人間とマシンの比率が、MXは人間の割合が大きいということです。マフラー取り換えたくらいでレース結果が大きく好転するとは思えないのですね。速さより音や外観といった嗜好の部分で選んでいる人が殆どでしょうね。
それからモータースポーツはプロの人は仕事ですから別ですが職業以外の人は部活動のようなものだと思っています。
私は中学時代は剣道部でしたから剣道やってない生徒と竹刀持って試合しても負けることはなかったわけです。2輪レースなら乗ることはもちろん、マシン整備や故障修理は2輪レースやってない人より出来るのが当たり前なわけです。
剣道だって竹刀や防具の手入れは自分でやって競技を続けるのですから、2輪レースで自分のマシンの修理を他人に頼んでいたのでは経験や技術が身につかないだけです。
私自身も最初は何にもできませんでした。30年以上やってきたから多少分かるようになってきただけです。体力は始めたころより大分落ちてますが・・・

あんなに始動性の悪かったエンジンが、キック一発になってしまいました。
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新品ヘッドに交換しただけですが
これでスタート前の憂鬱が解消されたでしょう。

やはりエンジンというものは、こうでないと!

今年は5年落ちキャブ車で新型FI車と戦うことを目的としています。

昔は無限キット付けたら「これでホールショットだね」などと冷やかされたものですが
私は無限キットでホールショットは決めたことないですが、狭山生産のノーマルCRでは数え切れないほどホールショット決めています。
私、スピードが無いのでスタート決めないと予選通過やポイント獲得が難しかったのです。

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同じチャンバーがこれだけ揃うのもめずらしいので記念撮影です。

普通のお客は1台しか頼まないので、1台作ったらすぐ発送なんで在庫が複数置いてあることは滅多にないことです。

人間は一瞬の快感を味わうために何百時間も働ける動物だと思います。
これらは作っている最中に喜びは全くありません。全部終わった瞬間の快楽は例えようがありません。



長期滞留車もいよいよ終盤を迎えました。明後日から溜め込んだバックオーダー品の製作に取り掛かります。
去年試作した無限ME用メタルガスケットが見事に冷却水漏れの連絡があり不良決定したばかりで
KR250のエンジン始動もうまくできず、何の成果も挙げられない日々が過ぎていくこのごろです。
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KRはエンジン始動こそ普通にできるのですがアイドリングから全く吹け上がらない症状に見舞われ、キャブのOHのあと腐食したガソリンタンクから錆びが出るので別のタンクからホースを繋いでエンジンかけてみたり
サイドスタンドスイッチが入っていると回転が上がらない仕様とかでスタンド解除してみたりしても症状は同じでした。

ロータリーディスクバルブのエンジンは整備経験ありませんので不具合の原因がさっぱりわかりません。
電気式のタコメーターや水温系が動かなかったりするのでECUの問題かと思ったりするのですが調べる方法がありません。
困り果てて北海道のオーナーに電話したら、「やめましょう」と通告されましたので、心残りではありますがエンジン復活作業は終了することになりました。
ここへ持ってくる前は快調だったそうなので、10ヶ月間置いておくだけで不調になる原因は何であったかこの先もずっと気にかかる問題になりそうです。
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精神的に病んできそうな私にも救いの手が差し伸べられることがあります。
CRF250の新品ヘッドもらいました。
貰ったといっても、ある取引をして体でお支払いする約束をしたので無料ではないです。
先週MXの練習に行きましたら、最後の方でエンジン不調になり、帰ってからエンジン開けてみたところ一箇所バルブクリアランスがゼロになっていました。
修復するのにバルブ交換とシートカットが必要で来週のレースには間に合いそうも無いと思ったところで本日部品が揃いました。
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新品タイヤも貰いました。
まるで私がレースに出ることを応援してくださっているようです。
実はこれも体でお支払い案件です。
これだけ揃えばエンジン組み上げて、遅延エントリーして23日のレースに出てみようと思いたいですが
エンジン試運転してから考えてみます。

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KR250のキャブレターオーバーフロー解析を行いました。
燃料コックPRI(プライマリー)の位置でガソリンがオーバーフローパイプから漏れてくる&エンジン始動不良の原因を追究します。

フラットバルブノキャブレターはロータリーディスクに向けて前下がりになっていてホリゾンタルとダウンドラフトの中間くらいのベンチュリー傾斜角です。
フロントとリヤは共通のようですが、ガソリンの吸入パイプ位置だけが違っています。
ガソリンホース取り回しの関係です。

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フロートチャンバー開けてびっくり!
ガソリンが腐ってヘドロのようになっています。
これではエンジンが掛からないの納得です。
腐食生成物が悪さして、フロートバルブの動きを妨げていることが分かりました。
フロートの浮力でバルブが閉じきっていないのでガソリンがオーバーフローの原因でした。
キャブ内の汚れは超音波洗浄かウエットブラストで落としたいところですが、費用と時間がもったいないので洗浄液とブラシで汚れ除去したあとエアブローで処置しました。
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フロートバルブのチェックはガソリンホースを繋いで、指でフロートを持ち上げてガソリンの落下具合で確認します。
汚れ除去後は確実にバルブが閉じていますのでオーバーフローは治りました。

もう一つ重大な問題があって、スロージェットが両方のキャブで塞がっていました。
腐食生成物が固まってしまって針金で突いても貫通しません。
これではエンジンも掛からないわけです。



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スロージェットの穴が拡大しないサイズのドリルで穴を貫通させますが、動力を使うと中でドリルが折れてしまうと使い物にならないので、手で回しながら穴を空けていきます。
貫通すればOKです。









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有害な汚れは除去したので再組み立てしますが、製作業務に支障がでるので、エンジン始動はこの次にしたいと思います。

取りあえず、オーバーフロー対策まで。









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そしてもう一つのトラブルはDT125です。
YZスペックのチャンバーが出来たのでオーナーが自走で乗って帰ったのですが1時間もしないうちに電話が掛かってきて引取りにいってきました。
距離にして20kmほどでR16号を千葉まで帰る予定が川越の上江橋を渡ったあたりで焼きついたとの連絡です。
あそこは一般道ですが80km/h以上のスピードで流れていますので、エンジンの限界が来たのでしょう。
持ち帰ってヘッド開けてみたらピストンに穴が開いていました。
焼き付きではなくて溶けたのですね。
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見事に穴が開いています。
排気側に傷がありますが、これは以前オイル切れで抱きつかせたときのものでしょう。
修理もしないで走り続けたということで、軽度な傷です。

燃焼室に破片が当たった痕が無く、溶けたアルミは全てクランク室へ落ちたと思われます。
クランクベアリングに悪影響を出さないためにはケース分解して切子の完全除去が必要と思われます。

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シリンダーの傷も軽度なものです。
これも前回抱きつきによるものだと思います。
排気ポートの上側は殆ど削れていないことが運転できた要因と思います。
排気ポート下部の方が傷が深いので
ボーリングして0.25オーバーサイズピストンに組み替えると蘇りますが、レーサースペックのチャンバーが過剰な空気を吸い込んでいた可能性があるので、全開域の燃調を濃い目に変更するか、ノーマルスペックのチャンバーに戻すかしないと自走で千葉まで乗って帰ろうとすると同じ羽目に会うでしょう。
今週末はトラブル続きで長時間製作業務が停まってしまいました。旧車の預かりは今後は考えさせていただきます。
430チャンバーは残り1本になりますので、次の予定を考えなくてはなりません。長期滞留車の最後になりますが、KR250です。
これまで長期預かり車の特注マフラー製作に集中していたわけは、作業スペースを空けて、3年ほど前から頼まれていた750SSのトリプルチャンバーを作り直す予定があったからです。ああいう大きい車体を取り回すためには場所に余裕がないとできません。
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84年型カワサキのレーサーレプリカKR250です。
78年から81年まで世界GP250ccクラスを4連覇した当時最速レーサーの技術をフィードバックしたタンデムツイン、ロータリーディスクバルブというユニークな構造です。
しかし、GPレーサーのようなスッキリとしたレイアウトとは程遠いスタイリングで補機類が詰め込まれた隙間をエキパイがクネクネと曲がっておさまっているデザインです。
黒塗装されたチャンバーのレイアウトは実車を前にしても分かりにくい複雑さで全く自由度がありません。
そのため良案が浮かばず10ヶ月も放置してしまいました。
オーナーが北海道在住で雪に閉ざされた冬は引き取りも無理だろうと思って春ころにできればいいかと思っていましたら、今月取りに来ると電話がありましたので「それは無理です」と答えたら5月に伸ばしてもらえましたので、1ヶ月くらいかけてツインチャンバー製作してみたいと思います。
先ずは試乗してエンジン特性を探ってみようしましたがエンジンがかかりません。
長期預かりなのでバッテリーのマイナス端子は外しておいたのですが、電圧が5Vくらいまで落ちていてこれが制御系を動かす電力が不足しているのだろうと思って新品バッテリーに取り換えて、再キックしますが、全くかかりません。2本のスパークプラグを外して点火を確認したら火花は正常です。
あとはガソリンが来てないと思って、燃料コックをいじったら大変なことになりました。
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このコックは負圧コックらしく、RES(リザーブ)、0N、PRI(プライマリー)という表示になっています。
通常のOFFはありません。エンジンが回っているときだけ負圧コックが作動しガソリンが降りてくるしくみです。
したがって運転時はON、ガソリン残量が少ないときはRESの位置にしますが、長期間停止したあとはPRI、すなわちダイレクトにフロートチャンバーへガソリンを降ろしてからONまたはRESに戻して始動する手順です。
先ほど始動できなかっった理由はRESの位置だったからですね。
それはわかったのですが、PRIにした直後キャブレターのベントホースからガソリンがダダ漏れになって、あっという間に床がガソリンまみれいなりました。大変危険です。工場内なのでストーブ付けていたら火ダルマになって人生終了していたでしょう。
これはキャブがオーバーフローしていますね。フロートバルブがイカレテいると思いますので直すまで試乗は不可能です。エンジン掛かりはしますが全く吹けないので、時間があるときに修理することにします。
79年型は360ccBANZAIキットがありました。85年ころまで生産されていたオデッセイ360という4輪バギーがありましたが、オデッセイ360のシリンダー/ピストンが流用されたパーツでしょう。430オーナーにとっては今でも憧れのキットパーツに違いありません。ところが、360cc用のチャンバーも廃番だそうで復刻しなければなりません。
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これは本物は手元にありませんので、完全に新設計のチャンバーであります。
430の純正をベースに110cc排気量が上がったことをファクターとして計算して作っただけの代物です。

パイプ外径が大きくなっていますので250cc用より取り回しがシビアになっています。





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250のパイプと並べてみると、大きさが違うことが分かります。

ストレート部の寸法が250のφ100に対して360がφ110に拡大されています。

それに伴いテーパー部も同じ角度で広がった形になっています。
排気量アップによってパワーバンドは低回転に移動することを考慮してエキパイ長も延長してあります。


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パイプが太いのでフレームとの隙間はギリギリに設定してあります。

ニーグリップ部はタンクより若干はみ出しますのでヒートガードなどで対策が必要かもしれません。
その辺はキットパーツですからオーナーの裁量でやっていただきたいところです。