ヴィンテージ・チャンバー少々

自動車の排ガス浄化装置、部品名はコンバーターといい排気管の途中に取り付けられます。
コンバーターはユタカ技研でアッセンブリーされますが、シールマットやステンメッシュで保護されて、ステンレス製の容器でカバーした部品です。
その中に排気ガスを浄化する触媒が入っていて、部品名をキャタリストとよびます。
当然キャタリストも設計された図面に基づいて製造されます。
しかし、機械部品の図面とは様子の異なる内容のキャタリストはハニカム構造のセラミックス担体に貴金属が目付された図面が標記されているものですから、機械加工部品とは全く違う製法や品質管理をしなくてはなりません。

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探し物していたら引き出しの奥から出て
きました。ドイツのエンゲルハルド社での打ち合わせの時のスナップ

会議通知を回したのは、この中におられる、栃木第一設計ブロック(エンジン設計)
のチーフエンジニア
現地法人の人達と、製作所の鈴鹿と狭山、
ホンダUKのパーチャス・セクション(購買部)
日本エンゲルハルド(現NEケムキャット)
HIT(ホンダ・インターナショナル・トレーディング)

左から5人目、一番小さいのが私。
91年、28歳のころでした。


ハニカムセラミックスは粘土を特殊な金型で押し出して、ワイヤーで切断したものを焼成して作られた陶器です。日本ではNGK(日本ガイシ工業)が担当し、貴金属の目付けは日本エンゲルと三井金属の2社手配となります。
貴金属は白金(プラチナ)が主成分で希土類元素が花薬として添加されます。
貴金属を泥水のようなスラリーという溶液に混ぜて、ハニセラムをどぶ付け乾燥させたものがキャタリストになりますが、その製造条件や浄化性能も機種毎に全て図面で取り決めされているので厳密な製造管理を経て、組み立て工場に、発注された数量と納期を守って搬入されなければなりません。
4輪の生産台数ですから一日に何千個のロットで製造されるわけですから、ミスのないように設計者が関係部門に会議通知を回して招集したというわけです。
ちなみにコンバーターは自動車部品の中で単体としては最も高価な部品だということです。

昼ごろ英国ヒースロー空港を発ち独ハノーバー着、チーフエンジニアや日本人駐在員と落合い、
ベンツでアウトバーンを走ってエンゲルハルド社へ向かいました。
会議終了して夕方の飛行機でベルギーのブリュッセルへ向かいました。翌日のCGW(コーニング・グラス・ワーク社)で会議のためです。
その夜はパブでムール貝たべたり、小便小僧を見に行ったり異国情緒を味わい、ホテルへチェックイン。
部屋から国際電話でドイツのシュツットガルトのニコンに駐在している高専の同級生と談笑しました。

翌朝、車で移動中NATO(北大西洋条約機構)の前を通過しながら、意外と田舎風景を見ながら
ここがモトクロスを国技とする国なのかーと思いながらコーニング社へ付きました。
ここではプレッシャス・メタル(貴金属)の話題だったのでジョンソン・マッセイ(貴金属を調達する会社)
のキャリア・ウーマンから説明を受け、HITの日本人駐在員は英会話堪能でキャリア・ウーマンとマンツー・マンで打ち合わせ、何を言っているのかわからない私は後で訳していただく始末。
日本生産向けの貴金属調達は田中マッセイ(田中貴金属)TVコマーシャルで有名でした。

無事会議終了し、それぞれの国へ飛行機で戻るのですが、ホンダUKのリック・スミス(写真左端)が
「空港までワイフに送ってもらったので帰りの足がない、クドーサンの車に乗せてもらえないか」
快諾した私は、イギリス人を車で家まで送る素敵な経験と思って、ヒースロー空港の広大な駐車場から
カンパニー・カーのバラードを運転してマニュアル・ミッションなのでヒールアンド・トーにダブルクラッチでギヤチェンジしていたら、スミスさんが足元を見ながら「ヒール・アンド・トーだね」と言うので、この人ドライビングに興味があることはわかりました。
後日、英国内の出張でスミスさんのクルマの助手席に乗せてもらったら、ウサギやキジが出てきそうな一車線の田舎道をドリフトしながらブラインドコーナーを爆走され、本場のヒール・アンド・トーを見せつけながらドヤ顔していたのを思いだしました。
F1コンストラクターの国です、一般のドライバーが十分速い、日本の交通事情とは大違いだと思いました。
3車線のラウンドアバウトをステップ擦りながら曲がっていくカワサキZZRを何台も見ましたし、クルマは交通手段だけでなく、走りそのものが好きな国民性なんだなと痛感しました。


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先日頼まれましたノグチ・チャンバーの複製

これ一個しかないので普段乗る用に新しいのが欲しかったとのこと

異形なパイプなので取り回し決めるのに一苦労でした。

なにせ、フレームやシリンダーフィン
にすき間1mmのところが3か所もあるんですから。




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私詳しくないですが
MX250というモトクロッサー

73年がYZ250Aだから
72年くらいですかね。

小学生時代、地元にオートバイ文化が乏しく、この車種の存在すらしらないで生きてきたので、今ここにあるのが不思議な感じがします。







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そして、これも詳しくないですが
F21M、カワサキのモトクロッサー

トレールモデル、バイソンが原型なのかな。
ご依頼はオリジナルがミドル・アップのチャンバーに対し、ダウンチャンバーにすること。

これは見本がないので、ご提示いただいだモノクロの写真一枚で真似て作ったので
スペックが合っているかどうか、わかりません。





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当然、オリジナルがダウンチャンバーでないので、マウントブラケットはフレームに増設しました。

これも写真の形状に似せてありますが、
そっくりではないですよ。

本物は誰も持ってないからわからんでしょう。






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そして、過去の教訓を活かし

ダウンチャンバーはキックペダルを踏んでみよ、ということで

キックは踏めます。







以上です。


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