2020年9月アーカイブ

40年前に製造されたファクトリー・チャンバーなので修復には慎重を記することになりました。
サイレンサー切除した後、テールパイプの向きを元通りにしないと、車体との位置関係が狂ってしまう可能性があることと、鉄板が薄板の上、腐食しているので溶接も健全にできません。
思った以上に難航しました。

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改造されたオリジナルのサイレンサー部分は切断するのですが
2重管のため、中身も外れてしまいます。

テールパイプがセンターになりますので
パイプの向きが元どおりになるように

マーカーでラインを引いておき、切断面は擦り合わせなしで溶接棒で仮止めして
傾きが無きように調節しながらの接合になります。
テールパイプから後ろが新品になります。



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拵えたサイレンサーの部品

#1の凹みはオリジナルに倣った位置で
チェンジペダルの干渉を避けるものです。

パイプの前後2か所を全周溶接して
パンチングにグラスウール巻いて
エンドキャップはリベット止めにしました。

将来ばらすことは無いと思いますが
メンテナンスできる構造にしておきます。



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組立て完了しました。

お客さんの指示で錆止めの耐熱ブラック仕上げです。











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完成車は見てないですが
若干のアレンジされている他は、フランス・カワサキ時代の形に似ていると思います。

WPとチャンバー、他に問題があるかわかりませんが、エンジンかかれば実走行も予定しているそうなので
イベントの時に見にいきたいですね。
80年代WGPサウンドが再現されることを期待します。



ウォーターポンプカバーの損傷が激しく修理不可能なので、新造して取り付けることにしました。
KR250は80年ころのワークスマシンなので純正部品というものが存在しないのです。

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本来は鋳造品なので少量生産なら
ロストワックス製法で作りたいところですが
予算に限りがあると思うので
可能な限り安価な方法を採らせていただきました。

アルミの丸棒を素材に旋盤とフライスで削り出したものです。

要はポンプの機能が回復すればいいだけなので、ケースカバーに取り付きさえすればいいシンプルな設計にしました。

この個体は日本に輸入されてから、この問題でエンジンをかけてないと思われるので
動かすことが先決のことだと聞きましたので。


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ハウジングの部分も素人ながら、このように加工してあります。

ポンプの能力云々を語る以前の問題で
取り換えるパーツがないのですから、仕方ありません。

まあ、これで水は回ると思いますよ。

余談ですが、ポンプシャフトの駆動は2番(後方)のクランク軸から伝達されています。
2番クランクは正転(前回り)してギヤを介して、インペラを上から見て半時計回りに回転させます。
冷却水はラジエター下からポンプ中央に流れ込み、羽根車の遠心力でポンプ外側の出口へ押し上げられ、シリンダーヘッドを冷却してラジエター上部へ上がって、ラジエターコア内を降りてくる。
で、よろしいですね。

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ケースやエルボーも取り付けでき、インペラも問題なく回るので、これは完了です。









明日はチャンバーのサイレンサー部分の改修に取り掛かります。

世間は4連休ですが前半は雨のためどこにも行かず、タイヤ交換台を作ってみました。

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ホイール・ハブセンターにアクスルシャフトを差し込み、ホイールを保持する台です。

タイヤ交換は普通にタイヤレバーを使いますが、ビードに体重を乗せやすいので
床置きで交換するより圧倒的にやり易いです。

150と350でアクスル・シャフトサイズが
全部違うのでシャフト径に合わせたアダプターをセットしてホイールを安定させることができます。

床置きでやると腰が痛くなっていたのですが
これ使うと、腰が楽になりました。
連休後半は天気回復するのでモトクロス練習です。(健康増進)

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もちろん、仕事も進行しています。

W/Pシャフトのインペラを止めるネジが折れているので、シャフトを引張り出せません。

そこで抜き工具を作ってギヤを内側から押し出す方法を採ってみました。









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シャフト抜けました。
オイルシールとベアリングも一緒に抜けています。


これはインペラを止めるネジが根元で折れていたかと思いましたが
違いますね、シャフト先端にM6ネジがあったはずなんですが、中ではなく外側だったようです。

シャフトが硬くて、ネジ穴開けるのが困難でした。


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インペラをネジで固定できました。

次はポンプのハウジング加工すれば完了ですが
ちょっと面倒な加工なので、連休明けに
続きやります。


















この仕事では歴史的マシンに触れる機会があります。
77年から82年までカワサキが世界GP250/350ccクラスに参戦し、K・バリントンやA・マンクがチャンピオン獲得したころのマシン。
今回は5月ころ予約いただいていたチャンバーの部分改修で、順番が来ましたので持ってきていただいた、KR250のチャンバー前後(タンデム・ツインなので)とRケースカバーです。

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お客さんの了承を得て画像載せています。

車体は見てないですが、80年ころフランス・カワサキから世界GPエントリーしたKR250のチャンバー。

製作者は存命らしいですが、高齢のため
こちらに依頼が回ってきました。

フランス・カワサキから払い下げられたKRをプライベートのライダーが所有した間に改造されたテールパイプ部分を
オリジナル同様に戻す改修を行います。

フランスから東京のバイヤーが、このKRを輸入した後、現在のオーナーに渡ってきたと説明をしていただきました。

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実車見てないので、レーサーズVol.42から
車体の確認をします。

画像は神戸の川崎重工ミュージアムにある
展示車両と思われます。

画像からチャンバー形状が同一の物のようです。
ゼッケン1はK・バリントンのチャンピオンマシンですね。

お客さん所有のKRはフランス人ライダー
J・F・バルデが乗った車体らしいです。
バルデはA・マンクと共に活躍し、81年にシリーズランキング2位(チャンピオンはマンク)獲得した選手です。

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ついでに頼まれたウォーターポンプの修理です。

冷却水が入ったまま長期間保管されたためか
インペラがアルミナの堆積物で固着して動かなくなっていたのでした。

オーナーがアルミナを削って、インペラは取り出せたのですが、ハウジングは使用不可能です。




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インペラを固定するボルトは折れてシャフトの中に立て込んでいます。

シャフトを引張りださないと立て込んだネジ穴の修理ができません。

シャフトの抜き工具を作らなければなりません。


奥のギヤはタコメーターのケーブルを差し込むシャフトが入っています。



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ハウジングの損傷が激しいので
削り出しで新造した方が上手くいくと思います。

ちょっと時間の読めない作業なので
来週取り掛かりますが
それまで他の業務はできません。



一つ一つ進行です。















日曜日の朝3;00出発の予定なのに、ZX10Rのリヤタイヤのエアが1kg/cm?に落ちていました。
土曜日中にタイヤ交換しないと間に合わないので、在庫があると思われる川越2輪館へ買いにいきました。

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左は新車装着のRS10
ほぼスリックなので、ドライ路面のグリップに定評がありますが、ウエット路面は期待できないそうです。

右は今回装着のS22
トレッドのサイド寄りにグルーブが施され
セミウエットなら問題なく走れそうです。
これで天候を気にせず出かけられそうです。

もう2年経ったからフロントも同じパターンにしておこうかな。

タイヤサイズ190/55ZR17
価格¥36850(税込み)は2輪館で最も高額なタイヤでした。
これなら期待できそうだ。

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そもそもスロー・パンクの原因は
デーラーの試乗車だった10Rのリヤタイヤにボルトが刺さって修理してあったためです。
2年くらい漏れてなかったですが
この猛暑続きでノリが溶けてきたかもしれません。
こんなんじゃ不安なので速攻で取り換えです。


財布に優しくないリッターバイクです。




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治具には2000の文字が書かれています。

2000年に作った治具なので
20年も使い続けたことになります。

RMXのチャンバーは20年作り続けても
終わりません。
今月も複数のオーダーが入っています。

このようなことが予想できたでしょうか。





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20年前に製造された当時のお客さんと
今のお客さんでは世代交代していると思います。

それは、20年前新車で購入したお客さんと

最近中古車を手に入れたお客さんという意味で違う世代だと思うのです。

中には20年間維持した上でのリプレイスかもしれません。

いろいろな人生の中に関わっていく商品なのですね。

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需要があるうちが花だと思いますので
最後のご注文があるまで
この治具を使って作り続けていきたいと思います。


同様にCRM250RR DT200WR、KDX125SRと
同世代のラインナップがありますので
なかなか暇になることありません。



今までいろんな怪我してきましたけど、今回ほど「死ぬんじゃないか」と思ったことはなかったです。
鉄板の切断面に強く手首の甲側を打ち付けてしまい、ザックリと鉄板のエッジが入ってしまいました。
一気に流れ出る鮮血、土砂降りの雨のように床を赤く染めていきました。
咄嗟に右手で傷口を抑えて止血を試みますが、指の隙間から血が漏れて零れてしまいます。
素早くティッシュペーパーを取って傷口を圧迫し続けます。10分ぐらい抑えていたら落ち着いてきたので
右手を緩めたら再び血が溢れでてきて、手を離さないと次の行動がとれないと思い、
家の中へ包帯を取りに行き、きつく巻き付けて、ようやく右手を離すことができました。


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押さえたティッシュが血を含んで凝固し
ギブスのように固まっているので、傷口の保護ができました。

怪我をした場所にティッシュや包帯がなければ出血を止める手段が無く意識を失って倒れたと思います。
その後、誰かに発見されるのが遅ければ
失血死したと思います。
それくらい危機的な状況でした。

神は僕を生還させて「まだやることが残っているぞ」と言われたような気がします。
バックオーダー完了してから死ねということかな。

その後、埼玉医大の救急病棟へ行き、切れた血管のレーザー治療と傷口の縫合を行い、1週間くらいで
傷口は塞がるという診断を受けましたので、ひとまず安心しました。

左手を動かす度に激痛なので、ペースは落ちますが仕事復帰いたします。

この年代になると心筋梗塞や脳溢血が発症し、職場で倒れることをよく聞きます。
僕は持病がないから関係ないと思っていましたが、思わぬところに危険が潜んでおり
バイクの運転同様、注意力や危険予知を怠ってはならないなと思いました。