東京国立博物館

CB750は初期型のK0砂型クランクケースの車両が最も価値があるという説があります。
途中からダイキャスト品で生産されているのに砂型がいいという根拠はどこにあるのか?

砂型鋳造はダイキャストに比べて、精度や材料強度が劣るので工業製品としての価値は落ちるというのが通説のはずです。
しかも生産性もダイキャストの方が上、即ち量産向きということです。対して砂型は少量生産向けといえます。
その最大の理由は金型製作のコストにあります。ダイキャスト用の金型は高額なので少量生産に向きません。砂型は原型に砂を込めて型抜きした空洞に溶湯を鋳込むので比較的コストが安い。
推察できるのは、品質の劣る砂型クランクケースの希少性だけを取って憧れているに過ぎないということで、ミッションや同弁系に不具合を持った初期型のCB750は飾り物としての骨董品としては後期モデルより貴重ということだと思っています。

現代の工業製品は加工データと生産設備を持っている企業であれば、どこでも同じものが作れてしまうことが、製品の希少性を失っていると考えるのです。
その反対で人間の能力と手作業による技術で作られたものは希少性はもちろんですが、現代の生産技術をもってしても再現不可能なことであります。

そんな人間の手作業によって作り出された芸術作品に会うために上野の東京国立博物館へ行って参りました。

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国宝として指定されている日本刀を常設展示しています。

国宝 三日月宗近 平安時代 10から12世紀ころ建造

現代の鍛造やレーザー加工などを駆使して外観上は似せて作ることは可能だと思いますが、刀剣としての機能までは真似できないと思います。
それは、鋼の鍛錬をすることによって得られる結晶構造や熱処理後の組織までは自動で再現できる加工機が存在しないからです。
そのことによって独特の刃紋や肌模様はこの作品だけが持つ芸術性なのです。

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重要文化財 長船光忠 鎌倉時代 13世紀の作品

備前長船派の源流といえるでしょう。

特筆すべきは800年以上も経過した鉄製の作品が、新品同様のコンディションで維持され続けていることです。

おそらく現代の自動車やオートバイは100年後に維持できている割合は1%に満たないでしょう。
800年後となれば一部部品を除いて完全に消失しているでしょう。


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重要美術品  津田助広  江戸時代
延宝五年(1677)建造

同館展示品で最も新しい刀剣であります。

平安時代の刀と大きな違いはないように思われます。
これは伝統的な技法が長きに渡って伝承されてきたことを意味します。

現代の刀匠の一人が話しておられた言葉があります。
「自分の人生はあと20年くらいで終わってしまうが、作品は何百年後も残って自分が生きていたことを伝え続けるだろう」

そのことから、芸術作品は現世において生活の糧となると同時に後世に対して訴えかけるメッセージを残すものであるに違いないのです。

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5月の節句には床の間に鎧兜を飾るのが日本の慣わしですが
これは本物の甲冑。

国宝  白糸威鎧  鎌倉時代 14世紀拵え

源頼朝の甲冑として江戸時代、徳川幕府まで伝えられたもの。

刀剣と甲冑は切り離すことのできない、時代の象徴のようなものです。



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甲冑の修復に役立つように絵図面が残されていました。

幕府の奥絵師として召抱えられた
狩野伊川院の筆による 19世紀の作品

写真の無い時代ですから絵書きの腕前が現代のデータに匹敵する役割を持っていたことと、絵画の美しさは当然ですが
均質な紙の製造が当時から行われていたことに驚きを隠せません。
現代の人が手作業でこれだけのことができるかというと、伝承されてない技術は失われているだろうと思います。

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場所は変わって国立西洋博物館
アウグストゥス・ロダンの弟子
アントワーヌ・ブールデル作のブロンズ像
「弓を引くヘラクレス」
ブロンズは石膏型に青銅を鋳込んで作られますので、各地にレプリカが展示されているようです。
これは川崎造船(現川崎重工)の社長であった松方幸次郎が1918年にフランスで一括購入した個人コレクションだったものです。
終戦後、戦勝国フランスから没収されていたものを吉田茂首相の申し入れで両国で協議され、日本に博物館を建設して展示する条件付きで返還寄贈された松方コレクションが基になっているそうです。
この作品、女性客が真剣に写真撮影している姿を見かけて可笑しかったですが、一見の価値ありです。

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