2015年4月アーカイブ

全日本MX会場でマフラーお預かりしてきました。

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YZ250F後方排気用です。

パイプエンドが凹んでいます。
中身にダメージはありませんが
このまま使用するのは格好悪いですね。

取り外して交換すればいいのですが
この際ですからデザイン変更してみましょう。






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先ずは全バラ検証。

なるほどー、よく分かりました。

新型なんでしっかりとした作り込みですね。
金型代が相当かかってそうなので
しばらくモデルチェンジしないでしょう。

以前のYZマフラーに比べると内径が大きくなっていてパワーが出そうです。





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パイプエンドをテーパーコーン状に作りました。

パイプの内径はノーマルと同寸ですが
長さが伸びていますので、音量に対するマージンが上がっていると思います。

材質はオールステンレスで強度も充分でしょう。





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サイレンサーの断面が異形なオーバルなので嵌めあい寸法を守るために
サイレンサー現品を預かって現物合わせする必要がありますので
パイプエンド単品のご注文はお引き受けできません。

費用はパイプエンド製作1万円
サイレンサー分解、再組み立て4千円
ステンレスリベット50円×8本
グラスウールヤマハ純正部品
送料(本州)1000円
代引き料400円

以上が費用明細となります。

川越のベルレーシング所属だった先輩から御依頼のCRM250R用チャンバーです。
3型以降のチャンバーはラインナップしていますが、2型は取り回しが違っていて互換性ありませんので
車両持込みの場合に限り、現合で製作しております。

ベルレーシングと言えば、83年の国際B級固定ゼッケン7番山口さんが所属したクラブです。
その年の桶川のレースで足首を骨折してリタイヤされましたが、それ以来右足の装具をつけて、ブレーキペダルは踏めないので左ハンドブレーキに改造したCR250に乗っておられました。
私がノービスのころは、利根川の練習場で右足装具の山口さんにブッチギられたことを覚えています。

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チャンバーのスペックはCRM250RRやARと同じものを使いますが
パイプのレイアウトやマウントステーの位置など、共通でない部分が多いので
車体なしには作れません。










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距離は結構走っていますが、手入れの状態から大事に使っていることが分かります。

主目的は近郊の峠道へ走りに行くということです。
オフロードは全く行かないらしいので車体がきれいです。
実は先輩もベルレーシングの国際B級でジュニア時代は鈴鹿のGPで1ポイント取ったことがあるそうです。
モトクロスで酷使した膝の怪我で手術したそうなので、オフロードは封印したということです。


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隙間関係がギリギリの取り回しで出来ています。
この後、研磨してクロームめっきにする予定なので完成したら画像アップいたします。

サイレンサーは社外品が付いていますが
予算に限りがありますので、それをメンテナンスして使います。

飛び込みの修理は受け付けておりません。それは長期間お待ちいただいている仕事に専念するためです。それと同時に、エンジン修理などはここでなくても直せる業者さんは多数あると思います。
そういうわけで、修理依頼は他の手段をお勧めすることにしています。

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今回は知り合いの頼みなので、バイク屋へ行ってくれ、というのも角が立ちますから
先ずは状態を確認するために、お預かりしました。

KDX220SRですが、症状はピストンが割れてしまったのは分かっていて

どうやらクランク室に穴が空いているので
塞いでほしいということです。


仕事終了後にクランクケースをばらして洗浄します。


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Rケースですが貫通して大きな穴が空いています。

予想した最悪の場所の欠損です。

溶接肉盛りしたあとケース合わせ面を正確に擦り合わせなくては使えません。








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Lケースも欠損まで行ってませんが、荷重でずれていることが確認できます。

全体的にオーバーホールの時期だと思いますが、あまり金を掛けたくはないと思います。

また、こういう物を直して使い続けることより
新しいマシンに投資していただいた方が
オーナーさんのためだと、個人的には思っていますが、そのへんの判断は私が決めることではないです。




翌日、オーナーさんに破損状態を確認してもらって修理することで合意しました。

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大きな欠損のあったR側ケースの穴は
ピックアップした破片を溶接しました。














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亀裂のあったL側ケースは溶接にて肉盛り

デブコンで埋めるという案がありましたが強度保証できない理由で却下しました。

可能な限り母材に近い修復を試みるのが正統なやり方と思うのです。

肉盛りは最小限度にケース合わせ面より
少し高めにするのがコツです。

後の面出しの手間を掛けないためです。



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クランク室側はエアグラインダーで
均します。

ケース合わせ面はオイルストーンで
面研します。

面出し完了の目安は、凸凹がある状態では
オイルストーンが滑り安定しませんが
急に摩擦抵抗が出る瞬間があります。
そのときが平面度が上がった状態です。





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面研完了したらRLケースを合わせて
ボルト締めします。
修正部分が浸るように熱湯を注ぎ
気密漏れがないか確認します。

何故熱湯か?
ダイキャストの溶接はピンホールが出来易いので、冷間で塞がっているピンホールも熱膨張すると漏れる可能性があるので
熱湯で膨張させてみると完全にわかります。

漏れると再研磨になりますが、これは全く水漏れなしで合格でした。

後は交換部品が入荷したら組み立てるだけです。

オーナーさんから、「組み立てまでやって幾らだ?」と聞かれたので
知り合いだから「5千円くらいでどうですか?」といいましたら(部品代別途)
「それは駄目だ、もっと取ってくれ」とおっしゃるので、1万円くらいにします。
低品質の修理に飛び込みとはいえ、高額を請求するつもりはありませんので快諾ですね。



最先端の高度な加工技術は高価な工作機械とコンピューターによるデザインの賜物だと思いますが
人間に掛かる工作の難易度は現代のものより昔の方がはるかに高いものだったことは容易に想像できます。
それは現代のように豊富な原材料と高性能な加工機の一切が無い状態から物作りをおこなったことを考えればわかります。
お前は現代人なんだから、先端の作り方をしろ。と言われるなら、こう答えます。
先端の作り方は会社員時代に学んだ、これからは古いやり方を尊敬して学んでいきたい。
日本人だって世界の工業技術から取り残された鎖国時代に、たたら製鉄で鉄を精錬して鉄砲や大砲を作った。
明治時代終わりごろには戦艦も作れるくらい生産能力が向上した。
当時の原材料事情や加工設備がどうであったか、などと想像してみると何でも簡単に手に入る現代の物作りなんてものは、昔の職人から比べれば全然楽な世界なんだろうと思います。
自分なんかが職人の境地に辿り着くことは到底不可能なことだろうと思いますが、少しくらい真似事をしてみたいと思うのは贅沢なことなんでしょうか。

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今日はこの金型を使って工作します。

内容は1mm厚の鉄板を巻いて
円錐台のテーパーコーンを素材に
テーパーエンドを内側にカールします。










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1個目の型を使ってテーパーエンドを折り曲げます。














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左から素材

右へ順番に工程後の加工形状を表しています。

テーパーエンドを内側に折り曲げるのに3つの工程で加工していきます。

金型を製作する旋盤が必要ですが
使用する道具は、鉄ハンマー
木ハンマーと万力だけです。

これで100年くらい前の板金方法でしょうね。

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このようなテーパーエンドが加工できました。

9速ATミッション作れるメーカーさんから見たら三流か工業高校の工作実習レベルかと
笑われそうですが

提示された予算は極僅かです。
何千万円も投資した工作機械や金型を使うわけにはいかないので、安価に作る方法を考えたらこうなっただけです。

こんなことはノウハウでもありませんので
真似して作る人は、ご自由にどうぞ。

会社辞めてから24年も経ってしまいました。
最初の3年くらいは何をやったらよいか、仕事も定まらず今のような体制になって20年が過ぎようとしています。
それは会社に在籍していたら今頃どうなっているだろうなどと未練がましいことを想像したりすることもありますが、これは不可逆反応なので失われた時間は取り戻せないのが人生というものです。
先日のホンダ経営陣の交代は、大問題になったエアバッグの責任を取った形かと思っていたら、違う理由だということです。
ホンダだけでなく多くのエンジンサプライヤーはフランスの発明家ピエール・ルペルティエの特許を購入してATミッションの製造を行っています。
初期のATは3速から始まり現在は6ATが高級セダンのパワートレインの主流らしい(買えないので情報だけ)ですが、これにホンダは意思を入れてしまって7ATを開発して製造を行いました。しかし、ハードとソフトが噛み合わず不具合を出して大きな損害が出てしまった責任を取る形が今回の退任に繋がったということです。
最新のATミッションを見ることが出来る唯一の場所は東京モーターショーで、部品館に駆動系専門メーカーのZFフリードリヒスハーフェンやアイシンAWなどのカットモデルが展示されています。
現物を目の当たりにしても複雑すぎて、私の低性能コンピュータでは理解不可能でした。
ATの部品構成はエンジン本体より部品点数や加工工数が圧倒的に多いと思いますので、最新の高性能、省エネルギー化の立役者は燃料噴射技術と並んでATミッションであると言えるでしょう。

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そしてこれがZFが開発した9ATのカットモデルだそうです。
先述のピエール氏の特許に抵触しない独自の特許を取得してあるので、世界の自動車メーカーに売り込みされていくことでしょう。

画像からみてわかることは、従来の5ATから比較してもコンパクトにまとまっています。
4つの遊星歯車機構と6つのシフト要素で構成されているようですが、その動きは画像みても理解できませんね。

目的は加速性能向上と省燃費性能です。
9速もあるわけですから超クロスミッションで変速直後のエンジン回転低下を抑え
ローギヤからトップギヤの変速比が6ATの6・04から9.84へ向上しており超ハイギヤードの運転が可能ということです。

しかもコンパクトで軽量ときてますから、このZF製9ATの今後の動向にも注目していきたいと思います。(しつこいようですが買えませんがね)