2014年6月アーカイブ

絶滅危惧種と、2輪車の排ガス規制に伴い新車の製造販売が中止された機種全般を指して、呼ぶことがあります。廃販になって15年以上経つのですが、それより少し前に創業した弊社ではその年代のマフラーのラインナップが拡充されつつある時期でした。
いまでもトレールモデル3機種は、HYSでチャンバーとサイレンサーをラインナップ継続していますが、年間を通じると注文が絶えたことがないので廃止にできません。
治具類も古くなって維持や保管も難しくなってきますので、およそ3年を目途に注文がなかった機種から治具廃却することにしておりますので、その後は電話やメールで注文されても対応不可能になります。
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治具とは、このように車体あわせ無しで取り付け位置を固定できるものを指します。
需要のないもの、ワンオフ製作したものまで治具製作することはありません。
過去の注文状況に応じて再度作る可能性があるものだけを任意で製作しておりますので、需要のない機種の治具が溜まっていくんです。
ですから3年くらいを目途に廃却しているというわけです。
2ストトレール3機種に比べると需要の少なかったKDXは全く対応しておりませんでした。
偶然、知人がKDX125SRを持っていて
チャンバーとサイレンサーの製作を依頼されたので、ついでに作っておいたのがサイレンサー治具でした。
チャンバーはと言うと、当時のK車のチャンバーが嫌い(レイアウト的に)でやりたくない仕事だったからです。嫌いな理由は、当時のK車の車体デザインに関わることですが、普通はエンジン設計が先で、そのエンジンをマウントする車体をモックアップしていく作業になりますが、K車は車体デザインが先に決まると聞いたことがあります。そのため大物の変更しにくい部分はそのままで、排気系などの後で変更可能な部品の取り回しに皺寄せが集中することになります。
そのためK車にありがちなクネクネとパイプが曲がってエンジンやフレームの干渉を避ける形状が不恰好だと思っているのです。
クネクネとカーブが多いパイプは設計どおりの性能も発揮しにくいということになります。
過去を振り返るとK車の活躍した人気車種は排気系のスッキリまとまったものであることに気がつきます。
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そういうわけで、作りにくいチャンバー部分を見なかったことにしてサイレンサーだけラインナップとしたわけです。

サイレンサー本体はスッキリしていますがリヤフレームのマウント部分は後付けのデザインの象徴で位置の揃っていないステーが二ヶ所溶接されています。

アルミサイレンサーは全て自家製バフ仕上げですが、アルマイトやめっき処理でコストアップすることを避けたいです。
利点は外観が良くなることと、金属表面が滑らかになることで水の粒子が留まりにくくなります。そのため腐食の進行を遅らせることができます。
分離混合ガスの宿命で排気したオイルが排気管内に溜まっていきます。そのためオイルで湿ったグラスウールを容易に交換できる構造になっています。組み立て後、加締めはアルミリベット4箇所でOK。
絶滅するまで治具は残しておきますが、自分が先に滅ぶ可能性もありますのでご了承ください。


物作りに必要なのは数値です。作るために必要な寸法が分かっていないのに材料を切り出すこともままなりません。
今回も製作を始める前に現物の寸法を測るところから着手しますが、通常のチャンバーとは勝手が違っていました。
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大きくなったチャンバーの胴体を路面にヒットさせないための形状だと思いますが
三角断面のチャンバーの図面など見たことがありません。

チャンバーの図面はストレート図で表します。
口元からの距離と内径で描かれますが、現物は曲げないと車体に取り付かないわけで
ストレートチャンバーと曲がったチャンバーで同等な排気効率であるかという検証もできていません。
常識的にパイプにカーブがあると流体に損失がでることになります。

では同じ断面積の丸パイプと多角形パイプで排気効率が同等かということも未検証です。
おそらく明確に答えてくれる日本人は少ないんじゃないかと思います。
レイアウト的には同じ断面積の円と三角だとどちらがロードクリアランスを稼げるか、という問題ですが
真円が三角にトランスフォーメーション(変態)することを想像してください。
三つの角が出来ますから縦横の幅は円の直径より広がるはずです。
そのかわり、角を繋ぐ線の部分が円の直径より幅が狭くなりますから、その線の部分をマシンがコーナリング時に路面と最も近くなる場所に持ってくると、ロードクリアランスを稼げるということになります。
motoGPではバンク角が61度になることもあるらしく、それでも路面にヒットする部分がないという、よく出来たレイアウトです。
このマシンは実際のバンク角こそわかりませんが、コーナリングのGでリヤサスが沈み込んだあたりでチャンバーの胴体が擦るみたいです。
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これが見本のチャンバーですが、両側とも路面に擦ってしまっています。
チャンバーが擦ってしまっては、これ以上コーナリングスピードがあげられません。
しかし、このチャンバーが他と比べると、シャシダイの数値も実走のタイムも最高だということですが、既に絶販で製造元に尋ねてもどの仕様だか不明だということなので、再生することになった次第です。

なんとか擦らないように内側に追い込んで
内側はサスのボルトにガッツリ当たるようにレイアウトしたので、もっとコーナー寝かせられると思います。

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左右出しのツインマフラーは位置決めに時間がかかります。
リヤフォークとのクリアランスを気にしながら
左右の高さや角度をそろえないと不細工な格好になってしまいます。
しかし、左右同時に見ることが不可能なので、片方のサイレンサー位置を決めてから
反対側の位置を合わせる、みたいな手順になります。





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極力フレームからはみ出さないレイアウトを心掛けましたが、実際のバンク角はサーキット走行で確認していただくしかありません。

当たるとすれば、一番張り出した部分だけだと思いますので、後で凹ませる方法を取らせていただきます。





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アンダーカウル装着が要件ではなかったのですが、大きくカットされていましたので
問題なく装着できました。

これにて製作作業終了!

2014年KX85のモデルチェンジが成されましたが、チャンバー、サイレンサーに変更はありませんでした。これは大物の金型変更には多額の費用が必要なため、エンジンに仕様変更があっても可能な限り流用したいという営利面の都合があるためと思います。
我社はKX85用チャンバーは90年代からラインナップしてきましたが、製造に関する考え方も変わってきているため、新たに作ることにしました。
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まだ途中ですが公開します。

エキパイ径が拡大され、チャンバー本体はノーマルより6mmだけ短くなっていますが大体同じ仕様に留めてあります。
最も大きな変更点はテールパイプを短くしてあります。
KXやRMは古いタイプのチャンバーレイアウトでアップタイプなので、テールパイプが長くなっています・
細長いテールパイプは排気の抵抗になるわけですが、短くすることで排気抵抗が減るでしょう。
そのためにはチャンバーレイアウトの変更が必要です。
CRやYZはローボーイタイプの取り回しになっているのでテールパイプが短いです。それと同じ効果を狙ってみました。
これから実走して確認していく予定です。
サイレンサーもこの機会に新作します。

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サイレンサー従来品から変更した箇所はこれです。

パイプエンドの水平部分が最低30mm必要という車両規則に準じて新作しました。
従来は、CRやYZ同様のアップサイレンサーのパイプエンドと共通だったため、
エンドパイプの垂れ角が少し下向きだったのを水平に是正した格好です。

エンドカバーの溶接痕も研磨して美装に努めましたので、新感覚になりました。



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今回は大塚選手の要望により、従来品より30mm短いサイレンサーボディにしてあります。
最近の流行は2ストの短いサイレンサーだということで、どのような効果を期待するかといいますと
排気の抵抗が減ります。吹け上がり、伸び共に向上すると思いますが、気をつける点は体重の軽いライダーでないとトルク不足の傾向が出ると思われます。
エンジンは負荷を与えることで物理上の仕事をしたことになります。
空ぶかしではどんなにエンジンが回ってもピストンやクランクが運動するだけの仕事しかしていないはずです。
質量のあるものを一定時間にどれだけ移動させたか、ということが仕事なので、燃焼室の圧力がパワーの元ですから、適当な排気の抵抗が圧力の抜け過ぎを防止する効果があります。なので燃焼圧力と排気抵抗のバランスを考慮する必要があるのです。
音量的には2mMAX法だと楽に通過するそうなので、思い切って変更してみました。
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頼まれてないけどエンドカバー
ラッピングしておきました。

2ストマフラーの熱であれば溶けないはずです。アルミ地より傷が付きにくいと思います。