2012年4月アーカイブ

埼玉県にロードレーサーのアルミタンクを作るメーカーがありました。タンク作りが専門ではありませんが自動車の主に車体関連の部品を試作、量産できる会社です。

ロードレーサーの、しかも全日本やWGPの契約ライダー専用で、空気抵抗を減らすためニーグリップや肘の収まりがいいように、契約ライダーの体型に合わせて型取りされた形状で作るため少量だけ生産されます。

その製法について聞いたことがありました。タンクのモデルは粘土で成型して、モデルをセメントに埋めてメス型を取ります。そのメス型に離型材を塗ってセメントを盛ってオス型を取ります。そして、このセメントの型を使ってアルミ板を大型のプレス機で絞って、タンクの部品を成型します。上型と下型は別々に成型して溶接すればタンクが完成するということです。

弊社の場合は大型プレス機がありませんので、同じような手法はできません。簡単な形状に板金加工したアルミ板を溶接で繋いで組み立てますので、成型できる形状は制約されますので、得意な仕事ではありません。どうしても形状変更や容量変更が必要だというお客さんには、その必要性の度合いを聞いてからなるべくお断りするようにしています。それはタンクの組み立てに非常に時間が掛かるため、さらに仕事が遅れてしまうことを懸念するからです。

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現行車は全て燃料噴射になっていますのでガソリンを供給するポンプが内臓されています。

キャブレターの場合は燃料コックだけで済んだのですがFI用のタンクはこのような大きなフランジの製作が必要になります。

これはφ130の丸棒から削り出しますので大幅なコストアップです。

自動車業界では常識なのかもしれませんがインジェクターで燃料を高圧にして噴射するのは分りますが、燃費がリッター30km以上走るエンジンですから噴射量は極微量だと思うのです。それなのにこのような大きなポンプでガソリンを圧送しなければならない理由が理解できません。供給量はあくまでキャブ車以下のはずです。

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お客さんの依頼内容はタンク容量を15L以上にしたいということで、可能な限り大きくしました。

大容量のタンクでガソリンを大量に運ぶより軽いタンクで給油の回数を増やせばよいのでは?という質問が愚問でした。

このクラスに限らず、長距離走るライダーにとっては頻繁に給油することがわずらわしいだけでなく、出先でスタンドまでの距離が分らないときにガソリン残量が多いことが安心に繋がるということを、オートバイでツーリングした経験がある人なら理解できることだと思います。

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セロー250ですが、タンクの両側はシュラウドでカバーされていますので、横幅を増やすには限界があります。

従って上方向に容積を稼ぐ形になっています。角ばって見えるのも、3次元における限られたスペースで最も容積が大きいのは球体より立法体であるということで丸みを極力無くしています。

 

 

 

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非常にハンドル切れ角が深いため、ハンドル操作に影響が出ない最大限度の形状がこういうことになります。

ガソリン満タンで17Lを達成しましたので、仮にリッター30km走るとすると航続距離510kmになります。

250クラスのオートバイとしては最大級の数字ではないかと思います。

製作時間は40時間といったところです。金額は時給ウン千円で計算してください。

ワンオフ製作のチャンバーを希望されるお客さんは次のことに、ご注意ください。

製作したいチャンバーの寸法図、または見本が無い場合はお引き受けできません。チャンバーの諸元はエンジンの仕様と密接な関係がありますので、車種毎に専用設計になっています。寸法図が提示されない場合は新規に設計しなければなりませんが、経験の無い車種のチャンバーをゼロから製作するとなると相当な試作とテストを繰り返さなければ、満足な物は作れないでしょう。そういう決まっていない試作などの期間や費用はお約束できるものではないということが理由です。

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今回のDT125は全く経験ありませんでしたが、製作できる可能性があったことと、こういう依頼に対応できないと、弊社の存在意義も無いと考えましたので、お引き受けすることにしました。

ワンオフなど安易に引き受けるものではないことを思い知らされる例でした。

DT125といえば水冷エンジンのチャンバーしか経験が無かったのですが、このマシンは空冷エンジンでした。初期型は78年ですがこれは後期型の80年モデルのようです。

依頼内容はRZ125チャンバーのスペックで作りたいということだったのですが、ボア、ストロークが56×50で同じなので使えると思ったのですが駄目でした。ノーマルチャンバーの寸法とRZ用が違い過ぎて、おそらくパワーダウンするだろうと予測したからです。

では空冷エンジンのレーサー用ということで77CR125が56×50で同じボア、ストロークなので使えるのではないかと試作に取りかかったのでした。

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これが77CR125スペックですが、試乗してみて落胆しました。

全体的にトルク不足で高速も伸びない、ノーマルより全然走らない失敗作でした。

カタログ値だけの性能比較ですがDTは13PS/7500rpmに対して77CRは22PS/10000rpmということで、同じボア、ストロークでも性能が格段に違うということ。ポート形状やピストン形状など他の要素が大きく違っているためにチャンバー形状も違ってくるということを物語っています。

当時のDTと同じ鋳造型で製造されている80年式YZ125も同じボア、ストロークですが、26.5PS/11000rpmという高回転高出力型の特性を持ちます。一般市販車のDTの性能が違うのは公道での乗りやすさや安全性を重視した結果と考えられますので、やはりノーマルチャンバーをベースに作らなければならないということです。

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ノーマルチャンバーは膨張部が2重構造になっていますので、外形寸法からは内部の寸法が測れません。

ストレート部とコンバージェント(収束)コーンは125クラスの過去データーから妥当な寸法を導き出し、推測して決めました。

ようやくワンオフ製作に掛かることができます。

 

 

 

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テールパイプがモノクロスサスのショックとクリーナーボックスの狭い隙間をクネクネと曲がって通してあります。こういう部分は実車がないと製作不可能です。

サイレンサーも頼まれましたのでレトロな雰囲気のオールアルミで仕上げました。

試乗してみましたら、ノーマル同様の特性で5000rpmから8000rpmまでパワーバンドが広がる乗りやすいものにできました。

8000rpmからレッドゾーンなので、レーサーのように高回転で回す必要がないエンジンです。

32年前のオートバイなので部品も廃番になっています。壊さないように走り続けていただきたいと思います。

この1年くらい、慢性的に休めない日々が続いています。新しいものを作ることは、予定を立てて仕事を進めていくのですが全くそのとおりにならず、遅れた時間を少しでも挽回するために休日は無くなるということの繰り返しです。たまにレース場にいると、知り合いから「暇になったのか」と言われてしまう始末で「お前は仕事だけしとれ」と言わんばかりです。

大会社にお勤めの人には分らない悩み事ですが、生産能力の無い自分がやっていることなので、仕方が無いと思っております。ちょっと疲れたときにはピアノの演奏でも聴いてみますか?

EL&Pのカリフォルニアライブ1974のときのピアノソロですが、今聴いても圧巻です。

Keith Emersonはいつでもカッコいい!                                                                                                                                                                                                                                                         

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新車は原付2輪までFIになっていますので旧車に限っての話ですが、キャブレターも長時間使用したものは消耗してきます。スロットルボディーが磨耗したり、真鍮のジェット類も穴が拡大したりすることで本来の性能を発揮できなくなります。そういう場合はキャブレターセッティングしても不調になります。

以外と見落としがちなのはフロート室の油面ですが、これが狂っていると同じセッティングオーダーにしても性能が違ってくることになります。そこで正しい油面になっているか確認する作業が必要になります。

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通常、油面測定といえば、キャブレターを横にしてフロートバルブが閉じた位置で、フロートチャンバーの合わせ面とフロート高さの距離のことを示しますが、本来の油面の意味と違います。

フロートバルブの接点を曲げて油面調整するときの確認のための数値です。

では油面が適正かどうかを、判定する方法は次のとうりにします。

 

 

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ドレンプラグが装備されたキャブレターならドレンホースを使用すればよいだけですが、古いタイプのキャブレターはドレンプラグが無いものもありますので、その場合は左のようなドレン穴付きのキャップを作製します。

ノーマルは加工しないでアダプターとして使用します。

 

 

 

 

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ドレンキャップにビニールホースを取り付けて車体に取りつけします。

車体は垂直に立てないと油面が傾いて数値が変わってしまいます。

 

 

 

 

 

 

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ガソリンコックを開けて、フロート室にガソリンが下りてくるとビニールホースに油面が見えてきます。

キャブレターの設計値は油面がフロートの合わせ面の高さになるように設定されています。

キャブレターが前後に傾いている場合は中心付近の高さで判定します。これは中心の高さに合っていますので適正と判断できます。

4輪用のソレックスキャブなどは、フロートの台座をスクリューで高さ調整する機能がついていますが、2輪用は分解してフロートバルブの接点を曲げて調節するため計測の仕方によって判定しずらいので、この方法を採っています。

油面が低いとガソリンの吸出しが減り、高いと増えるという現象がおきますので、キャブセッティングは油面が適正であることが前提の作業になります。

 

 

 

 

 

 

 

CRF250サイレンサーのアルミ・チタンマフラーはMFJ国際B級以上のクラスに適合ですが、国内A級以下は純正でチタンを使用している機種以外はチタン材料の使用が禁止という規則があります。

そこで国内規則に準じたマフラー製作の依頼がありましたので作りました。

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エンドキャップとジョイントパイプがステンレスになっています。

筒はアルミを手巻きで製作しています。

バフ掛けして艶をだしています。

細かいキズを取って表面を滑らかにしておくことで泥が付着しても簡単に落とせます。

 

 

 

 

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組み立てた状態です。

ノーマルマフラーが大きく、重量が3kgありますので、軽量化目的でアルミ・チタンマフラーを作りましたが、ステンレスに置き換わった部分で重量増が懸念されました。

結果はアルミ・チタンの2kgに対して2.6kgになりましたが、ノーマルより400gの軽量化です。

前回2011モデルでパワーチェックして、中速トルクの厚い仕様と中身は同じにしてありますので、国内Aクラスでも効果が発揮できるものと考えられます。

ステンレスパイプが固く、手曲げ加工が無理でしたので、機械曲げを外注した分、製作コストがアップしていますが、チタン仕様と同じ価格48000円をキープしたいと思います。

82年に劇場で観て以来、実に30年ぶりに観ました。

日本で最も2輪車が売れた年が82年です。空前の2輪ブームと、それを許さない反対勢力。私たちのような強烈な個性を持った人間が多かった時代。彼らが段々、歳をとって勢いが無くなっていくのと同時に反対勢力の力が勝ってきて、現在のような衰退ぶりを見せてきました。今はただ、あの頃を思い出して懐かしむばかりです。

モテギでロードレースしているナオキさんからいただいたSDカードで映画を観ています。

北野晶夫の代役だった新人ライダー、平忠彦さんは当時、埼玉伊奈レーシング所属でした。伊奈レーシングの代表、赤石さんがマン島TTレースに出場したとき、日本人ライダーとして選手紹介されたとき、今までやってきたことを初めて認められたことを実感したという話をナオキさんから聞きました。

男の美学だと思いました。 

主題歌、ローズマリー・バトラーの「ライディング・ハイ」を聴くとやる気満々になります。

同時に19歳のころの自分の記憶が蘇って、命掛けの練習を思い出します。僕らの練習場は愛媛県西条市の鴨川上流にある黒瀬ダム周回コースでした。

会社員時代の後輩に香港系イギリス人のS・レナードという男がいて、「汚れた英雄」のエキストラでレースシーンにTZ250乗って出演していたと言ってました。

彼は横浜が実家で、走り屋が多いことで有名なケンタウロスの人たちと、第三京浜で最高速だしては覆面パトカーを振り切っていたそうで、料金所を通過するときは、お金を用意しておいて投げ込んでいたので料金所突破はしていないという、彼らの言い分でした。神奈川県警のパトカーはS君のことを名前で呼んで停車を求めていたそうです。

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これも学生の頃、週刊プレイボーイで連載していた漫画ですが、登場人物の半分くらい実在するとレナード君が言っていました。

横浜から東名、名神を走って神戸でコーヒー飲んでその日のうちに帰ってくるという爆走ツーリングのグループでしたが、それも実話です。

MCFAJのモトクロスチームもあったことは「サイクルサウンズ」で読んで知っていました。

まあ、ちょっとした青春の一ページです。