Monograph 15 「アルミタンク」

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アルミタンクはワークスモトクロッサーだけの物ではない。70年代後半までは量産車がアルミタンクだったのに、大物は金型でプレス成形されるが、溶接などハンドワークの部分に熟練が必要なため、生産性のよいプラスチックタンクへと変更されていったのだ。 昨今のビンテージオフロードの盛り上がりで70年代後期のレーサーもレストアされレースに参加する台数も増えてきた。ところが30年も前のプラスチックはどうしても劣化が進み、軽い衝撃でも割れてしまって、ガソリンが漏れてしまうのだ。接着材で補修しても耐ガソリン性のものはなくて使い物にならない。塗装しても揮発するガスで塗膜が剥がれてしまう。 そんな悩みを解決するためにアルミタンクを製作することにした。タンク専門の会社に依頼すると、量産とそっくりな形状の品物ができるが、必要なモデル代、金型代、を負担した上に製作費がかかるので、すくなくとも35万円は かかるらしいが、お客さんの依頼は1個だけなのでそのような金額では諦めてしまうだろう。今回はプレス成形を行なわない方法、アルミ板から叩き出す板金手法で作ったタンクだ。 全体のデザインを決めるアッパーハーフをハンマーで叩きながらカーブをつけていく。見本と見比べながら感を頼りに曲げていくのだ。一枚板では不可能なので、要所要所分割して成形して溶接で組みたてていく。フレームに組みつけるロアーハーフも車体に取り付け確認をしながら成形していく。アッパーとロアーを接合する前に形状を整えないと、後からでは叩けないのだ。溶接が全て終了したら、水を満タンに入れて洩れがないか確認する。エアーを入れて水没させる方法もあるが、加圧してタンクが膨らんでしまうことがあるので、水を入れた方が安心なのだ。これでプロの塗装を施せば、アルミ製の複製タンクであることはよく観察しないと気がつかないだろう。 アルミタンクはけしてワークスチームだけのものではない、むしろ庶民的な旧車マニアのためにあるのだ。

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