2010年8月アーカイブ

連日猛暑日であろうと、世間はお盆休みであろうと、私には関係ない。

大勢のお客さんが私の作るマフラーを待っていることも充分承知しているが

どうしてもやらねばならないことがある。

それは、このようなものを作ることを約束してしまったからだ。 IMG_0704.JPG

これをつけて走るとどの様な喜びがあるのかは私は知らない。

これは私が考えて作ったものではないが、作った人に再び頼めない理由は

製作者がやめてしまったためであり、既に廃盤の商品になっているからだ。

それなのに、この見本だけで製作に必要な加工寸法を割り出し、材料を選定し、切削工具も購入し

取り掛かっている。

おそらく全工程に費やす時間は100時間を越えるだろう。

時間工賃を1000円で計算しても10万円になるが材料代や工具代は別に実費で払わなければならない。

おそらくこれを希望するお客さんは、そのような計算は一切、頭の中にはないだろう。

もちろん、掛かった全額をお客さんに請求するつもりは毛頭ない。

最初から利益にならない仕事だということを私は分っていたからだ。

それでは何故、儲からない仕事を引き受けたかというと

やってもいないことを、大変だということが嫌いだからだ。

自分がやって経験したことだけが、語っていいことだと思っているからだ。

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アルミの塊からマニュアルのフライス盤で削り出す。この加工時間を加工しないで算出できる人がどれだけいるだろうか。これはピボット部分のパーツ

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土曜日夕方までかかってここまで出来た。

クッションブラケットとリヤアクスルのパーツ。図面が無いので寸法計測しながら加工していくので

非常に時間がかかる。明日のレースの整備があるので、これにて中断。

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本日はアーム製作。

手前がアームの型で、上の4つが絞って出来たアームの部材。

作り方は教えてもよいが、割愛しておく。

よく、作り方を自分で考えないで他人に聞く人がいるが、

調べたり、トライする努力なしに安易に情報を得ようとする行為なので適当に答える。

自分で考えて物事を運ばない人は、新しい物を考案する能力は得られないと考えられるのだ。

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アームを溶接で接合してから、スイングアームの形状に合わせて曲げてある。

組み立て治具に各パーツを固定し、仮留めする。いよいよ本溶接ができる状態だ。

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溶接完了し、バフ研磨して組み付け確認。

100時間を超える全工程が終了した。オリジナルに引けをとらない仕上がりではないか。

こうして絶版のスイングアームは復刻された。溜まっているバックオーダーが恐ろしい。

盆休み前に片付けておきたい仕事がこれ、預かりスペースが狭いので

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依頼内容はスリップオンサイレンサーの製作だが、このようなカタログ写真しかない。

図面もデザイン画もない、いつものことである。よほど信頼されているのだろうか。

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お客さんの希望がショートタイプなのだが、公道仕様のため、静粛性に配慮して作らねばならない。

特殊吸音構造はMXレースで培ったノウハウが活かされている。

実は、排気量が大きくてもシングルよりマルチシリンダーの方が容易く消音できるのだ。

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これが完成した状態、カタログの見本よりイケてるに違いない。

そして、音質とパワーフィーリングの確認のためロードへ繰り出してみる。

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音はショートタイプに関わらず、ノーマルのように静粛だがアクセルを開けたときの重低音が気持ちいい感じだ。

走りだしてみると、パワーが抑えられた感じもなく一気に吹け上がる。

短くても内部容積を充分に取ってあるので、何処やらのショート管よりトルクが出ているのだろう。

これならオーナーさんにも気に入っていただけるに違いない!

いつものことながら、これはワンオフ製作でラインナップはしておりません。

スズキRMの前のモデルはTMという名称でした。昭和38年生まれの私でさえ乗ったことがありません。

エンジンや車体はほぼハスラー250ではないかと思います。ハスラー90は持ってましたけど、何処へやってしまったかさえ覚えていない遠い昔のことになってしまいました。

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さて今回の製作依頼はTM250のチャンバーです。下に置かれた純正品が老朽化のため新作することになりました。

当時のレーサーはサイレンサーもありませんが、テールパイプにスプリングフックは付いているので

オプションでサイレンサーを装着できたのでしょう。

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潰れたノーマルチャンバーを元に採寸して製作したニューチャンバー。

 

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口元フランジも絶版ということで、新作し、ニューチャンバーとセットになります。

採寸した諸元はこのようにガバリを作成して鉄板に罫書いて製作します。

IMG_0695.JPGそして、オプションのサイレンサーも取り付けました。

 

レストア中のこのマシン、クランクケースもOH中なので内部が確認できますが

これはプライマリーキックではないことが分ります。

最近のオートバイは全てプライマリーが当たり前になっていて、ギヤが入っていてもクラッチを切ってエンジン始動ができる構造になっています。

それはキックギヤとクラッチアウターのギヤの間にプライマリーギヤが存在してメインシャフトの連結をクラッチで解除しながらクランクギヤを回せることで、ギヤが入っていても始動できるわけです。

しかしTMにはプライマリーギヤの軸穴が存在しないことが右ケースを見れば分ります。

キックギヤとカウンターシャフトのギヤが直結の構造です。

即ち、ギヤをニュートラルにしてからキック始動できたということです。

ギヤが入っていれば押しがけはできますから、ロードレースでも押しがけスタートが主流でした。

モトクロスでは、今のようなスターティングマシンは無く、エンジンを止めた状態でオフィシャルの日章旗を振る合図でキックスタートでレースしていました。

当然、右足でキックして、左足でギヤを入れてスタートするわけですから、予めギヤをいれてキックできるプライマリー車の方がスタートが優位だったわけです。

古いマシンを乗っている人を見て、「新型のマシンの方がいいよね」という人がいますが

これは古い名作映画を観たり、懐かしい歌謡曲を聴いたりするのと似ていると思うのです。

新型が性能がいいのは当たり前、いつまでも自分の青春時代のマシンを楽しんでいたいという欲求があることを非常に理解できます。

このダウンチャンバーのリバイバルは口元フランジとサイレンサーも新作で3台分同時に、しかも前金で依頼されていますので、他の仕掛かり業務も含めて8月中に急な依頼がありましてもお引き受けできませんのでご了承ください。