2021年6月アーカイブ

YZ250FのリヤショックOHを頼まれたのですが最近のショックは安易に組み立てできませんでした。

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分解はほぼ特殊工具なしでできます。

リザーバータンクのガスを抜いて内圧を抜かないと分解が始まらないですが

リザーバーキャップのセンターに2mmの穴が空いているので
1.5mmの棒を差し込んで窒素ガスを抜きます。





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リザーバーキャップの表側

センター穴2mm
この中にゴム栓が入っており

注射針を差し込んで窒素充填するようです。

注射針のツールが必要ですね。

因みにWPはネジを緩めてネジ山のすき間から充填してネジを締める工具が必要になります。



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キャップの内側

センターに押し込まれたゴム栓に注射針
を貫通させて充填し
針の穴はゴムの弾力で塞がるということです。









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ゴム栓はOHの履歴がないため
穴が貫通してないように見えます。
新品組み立て時に特殊な方法で充填されたのでしょうか。

GAS圧掛かった状態でゴム栓を引っ張る
ツールがあるのか、まるで手品です。
種明かしはわかりませんでした。

今回は地元のサスペンション屋さんのTムラさんとこで組み立ててもらいました。
年に何回もやらない作業なので特殊ツール作るより頼んだほうが早いです。


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そして致命的なのがパーツリスト
リヤショックの部品はこれだけしか設定されていません。

上記のリザーバー関係の絵は一切ありません。

ピストン廻りやオイルシールも無しです。
ショックアブソーバー・サブASSYが最小単位なので部品交換が高額になるという意味です。

他メーカーのショックは全数の部品番号があるのに、このパーツリストは一般ユーザーや販売店はメンテナンス不可にするということです。
KYBと契約したショップのみ部品販売されるということですね。
その他は損傷させた場合はサブASSY購入して直すということになります。(不親切ですね)
元々大して売れてない機種だからメンテナンス・サービスまで行き届いたラインナップはできないということで理解いたしました。
H社やKTM社は従来通りメンテナンスできるので、メーカーのポリシーの違いが見えてきます。
お客さんから電話が入って、部品が壊れたが廃番になっていて取り換える方法がないから修理できますか?ということで、現品を持ってきてもらいました。

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KDX125SRのクラッチカバーです。
割れたときの状況を聞いたのですが
車体を倒したり、何かに衝突したことはない
異音も聞こえなかったので
いつ割れたのも不明だが、ツーリングの休憩中にオイルが漏れていることに気が付いて発見したそうです。

何とも原因がわからないですが
クラッチ側の内部に異常はなく走行はできたということなので欠損部分だけ修理することにしました。

破損原因の推察は後半に書きます。

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内側に拡がった破断面から
外側に破片が外れることはできない形状であることが分かります。

そのため入力はカバーの外側から入ったことになります。

破断面に波状の模様が確認できます。
これは一発の衝撃ではなく
繰り返し荷重がかかって亀裂が進展していることを表します。

オーナーさんの連絡で当初の予想とは違う原因だったことが判りました。



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外側のコーナーに亀裂が認められます。

外側からの入力で引っ張られた証拠です。
亀裂までが修理の範囲になります。





ケースカバーはダイキャスト製品なので材質上の欠陥がなかったか考察したいと思います。



鋳造品や鍛造品において材料内部が均質であるという前提で設計されていますが
実際はそうではありません。鋼材メーカーで金属を溶解し成分を調整してから連続鋳造で
押し出しの丸棒や圧延の板で製品になります。
これは鉄鋼でもアルミでも材料メーカーから出荷される形は決まっています。
材料ロットはいずれも溶解ロットと同じことですが成分分析は溶湯の状態でサンプルを採って測るので
溶湯の全体は分かっていないはずです。
それから、圧延でも押し出しでも鋳造時に材料内に存在する湯境やブローホールのような欠陥があったとしても高圧で成形されて出てきますので圧縮されて検出不可能になって製品化されています。
ですから外観上はなんの問題もない鋳鍛造品のなかに、偶然ですが薄肉部分に欠陥が紛れていて
丁度その部分に過大な負荷が掛かったとしたら亀裂が発生する可能性はあるでしょう。

唯、足回り部品のように破損したら重大事故につながる重要保安部品はX線や超音波などの非破壊検査で全検されるべきものですが、ケースカバー類は重要保安部品でなく欠陥の発見頻度も少ないため
検査しないことが大多数だと思います。

学生時代、非鉄金属材料は専攻していましたが会社員になってその知識を使う機会もなく、殆どを無駄にしてしまった気がしますが、勤め先の本田技研ではアルミ製品は不可欠で埼玉製作所から2輪組み立てが無くなって4輪工場に移動になってから材料品質係へ配属され、素材メーカーには大変お世話になりました。
本田が取引していた主要な非鉄金属メーカーは、昭和電工、住友軽金属、神戸製鋼、日軽金、光生アルミですが、アルミの精錬を自社で行っているのは日軽金だけでした。
アルミの精錬はホール・エルー法に代表される電気分解なので、地殻内から採掘されるボーキサイトという鉱石からアルミナを抽出し、酸素とアルミに分解する際に何万kw/hもの電力を必要とするので
発電コストの高い日本からはアルミ精錬事業が撤退したという経緯があります。
唯一のメーカー日軽金も設備の老朽化を機会に2014年に精錬事業を撤退したことで、日本は100%アルミを輸入に頼ることになりました。
強度保証の必要ない製品はスクラップなどのリサイクルで再生産すればいいですが、強度保証が不可欠な製品は純度の高いインゴットの状態で輸入して使うので、製造コストも高騰しているという現状でしょう。


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エンジンケースなどのダイキャスト製品は
ADC12という材質が大部分で、これも同じ材質だと思います。

ADC12は金型に高圧の溶湯を注入して成形されますから、空気や不純物も混ざって固まります。
製品外観からは見えませんが
溶接の熱で塞がっていた気泡が膨張して
表面に沸いてきます。

なので溶接ビード付近は気泡が多数確認できます。
気泡の混ざらないダイキャスト法は真空中で溶湯を注入するので設備費が高額になりますので2輪、汎用エンジンでは用いない
です。
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それに対して、アルミフレームやホイールなどのダイキャストに使うAC4Cという材料はT6熱処理するので、溶湯に気泡が入らない鋳造方法を採っています。

溶接ビード削りましたが
やはり気泡が表面に残ります。
しかも、亀裂があった部分ですから
亀裂断面に汚れたオイルが残留しているでしょう。
それらが溶接の熱で噴き出している状態です。
上から肉盛りして気泡を隠すことはできますが、外観がさらに悪くなると思いますので、このままにしておきます。





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ケース合わせ面も欠落していたので
大体平面になるように修正しておきました。
ガスケット挟んで締めるカバーなので
オイル漏れは止まると思います。


クラッチカバーが割れた原因ですが
予想していたのは
キックペダルを踏むときに、何らかの固い物体が挟まって荷重を受けたのだろうと思っていました。
しかし、キックボスが衝突したことが原因でした。
キックペダルが真下まで下がっても、キックボスがカバーに当たることはありません。
オフ車のキックペダルはステップがストッパーになるためカバーに当たることはないですが、この車体に限ってステップ位置が変更されていて
キックペダルのストッパーが無かったという特殊ケースでした。(種明かしされるまでわかりませんでした)

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シリンダーから下が全損だったエンジン組みあがりましたが、
運よくピストン下降中に壊れたため
シリンダーヘッドは無傷でした。

しかし、ピストンが割れるくらい乗り込んだエンジンということは、バルブ廻りも消耗しているはず

交換は頼まれてなかったですが、タペット・クリアランス測定するとIN、EXバルブ4か所
規定値外でした。
このまま組んで渡すとシリンダー下が新品なのに間もなくエンジンが止まると思い、
バルブとヘッドをクリーニングしてから
在庫のシムで調整して、規定値に調整しました。バルブフェースが摩耗しているのが原因なので、今度のレースが終わったらバルブ4本交換する必要があります。
部品代135000円掛ったばかりですが、エンジン取りに来たオーナーさんに説明しておきました。
ピストン壊れるまで乗ってしまうのですから、理解されたらいいのだが・・・

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極秘任務遂行のため、当分の間一般のお客さんの依頼をお断りしてます。

予定完了するまで新しい製作物はありませんから、プロダクツ更新無しです。

NSR50のサーキット用チャンバー
ZX10Rスリップオン・サイレンサー(排気バルブ無し)
77年型RM125リヤフォークメンテナンス
(ピボットベアリング交換)
   秋までに実行したい

その前に10Rをキャラバンに積むラダーを
固定するフックを作る。(ラダーがずれたら車重200kgのバイクを落としてしまう)
今年こそ実家帰省のついでに四国ツーリングを模索しているところです。

徳島の太平洋側から室戸岬経由で四万十⇒足摺岬が第1ルート
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石槌スカイラインから四国カルスト⇒高知⇒寒風山トンネル戻りが第2ルート。
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月に1回ペースでモトクロスレースとの日程調整になるでしょう。


今年のジャパンVET参戦しました。
チョット先輩のJ1(Junichi)さんの動画を見つけましたので貼り付けさせていただきました。
私が走っている動画がレアだと思いましたので。                                スタート後7″あたりで中央に映っている水色のジャージが
私のようです。
1コーナーは押さえられて2番手で立ち上がって4位でジャンプ飛ぶ姿を確認できました。
すぐ後ろでガヤガヤと競り合いがあったようですが、巻き込まれないでよかったです。
インターミディーの選手に抜かれながらもエキスパートで2位走行という微妙な結果ですが、レース中は楽しかった記憶しかないです。
60過ぎでモトクロスはキツイと思いますが、老化防止には最高ではないでしょうか。


先月のレースでエンジン壊れて、修理のため預かっているCRF150Rについてです。
新品交換のためリストアップした部品が入荷して検品中にわかったことです。
別に鬼の首を取ったように言うつもりはないですが、一人のユーザーとしての憤りを誰でもいいから
伝えたい。
パーツリスト作成する人も部品を包装する人、倉庫から出庫する人、IT化が進む現代であっても最終的には人間の手作業によるところでミスが出てしまうことは避けられないことなのでしょう。
だから、メーカーに恨み言をいう目的ではなく、エンジン修理のてんやわんや人情劇場をお知らせしたい。

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この部品を頼んだ覚えがない。
しかし、見覚えのある部品です。

早速注文書を確認すると、品番は確かに注文しています。
もしや、包装ラベルと中身が間違っているのか。
年配の社員をリストラするため長年経験を積んだ職場から、やりがいの少ない倉庫へ配置換えを命じられる話を聞いたことがあります。
技術職からアルバイトでもできる単純作業を任されたベテラン社員は自分の立場を惨めに感じて退職を願うように仕向けるためです。

だから責任の軽い業務だと思って注意不足になって包装を間違っているのでは?と勘ぐってしまいました。
結論は私の勘違いで、品番と部品は一致しており、大変失礼な考えでありました。

では、この見覚えのあるベアリングが描かれているパーツリスト上の品番を追ってみました。

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注文した部品はトランスミッションの
カウンターシャフト、左ケースに圧入されるベアリングです。

#30の品番は包装ラベルと一致していますので
誤配達の可能性はゼロです。








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ところが問題点が発覚しました。

注文時は最新のパーツリスト(ウェブ上)
ですが、左は2016年のパーツリストです。

#30の品番が上とは違っていますね。

どうやら16年までが正しくて17年以降が
全部誤りになっています。






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この間違っている部品は16年までは
シフトドラム、シフター側のベアリングと
同じ品番であることがわかります。

要するにシフトドラムのベアリングとカウンターシャフトのベアリングが入れ替わって記載されたことになります。

17年モデルでどのような改定があったかは不明ですが、
おそらくパーツリストの作成は、それほど大規模な部署ではやってないと思います。
一人の担当者は複数の機種を掛け持ちで
改定業務に携わり、校正や承認も限られた人員で行われているでしょう。
そういう手作業の中での誤りであったと推測されます。

ここでメーカーに対して保障を求めるとか、説明を聞くとかそういうことではないのです。
現状の把握、部品代総額133000円に及ぶ修理を間違いなく迅速に行うのが私の役目、
注文した部品が全数納品されたこととともに、1個だけベアリングが足らないために、追加発注した部品が入荷するまで組み立て作業が中断していること。
些細なことではありますが、当事者としてはどうしようもないジレンマに陥ります。

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新品クランクケースは、このとおりベアリング無しの状態で入荷します。

全て取り寄せた新品部品で組み立てたいので追加発注した部品を待ちます。










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急ぎの場合は破損したクランクケースから
ベアリングを抜いて再使用すればいいだけなんですが

ドライブスプロケット側のベアリングは
トランスミッションの2軸で一番荷重のかかる部分なので
ここは新品にしておきたいから待機している状況です。