物作りは科学か

物作りは習ったことがありません。理論的なことは学生さんや企業の開発部門の人のほうが詳しいはずですから、ここでは数式もでません。
理論を証明するためのテスト・ラボもありませんから、頭の中でだけ考えた作り方を実行しているだけです。

CIMG6467.JPG
約束していたミッション・カートのチャンバーが入ってきました。

同じ系統のエンジンらしいですが
チャンバーの諸元が全然ちがうものが二つあります。

これを装着したエンジンがどんな特性であるかも乗ったことがないのでわかりませんが

モトクロッサーのエンジンなので2輪としては乗ったことがあるし、チャンバーも作ったことがあるので、ノーマルのスペックは分かっています。
これと同じ物を作ってはお客さんの要望は満足できないので、モディフィケーションしなければなりません。
要求はストレートエンドの回転がタコメータ読みで足らないのであと少し伸びればいいということですが
果たして要求どおりにできるでしょうか・・・

チャンバーを設計するためには、その役割や原理を理解しておかないと無理ですね。
よく誤解されているのは、「チャンバーはパワーの元」といわれますが違いますね。
エンジンは内燃機関ですから、空気とガソリンの混合ガス(理論空燃比14.8対1)を燃焼させた圧力で
ピストンを押してクランクの回転運動を生み出す機械なので
ここにはチャンバーやマフラーがエンジンの構成部品ではないことがわかります。
キャブレターやスロットルボディーから吸入ポートまでが吸気系と呼ばれるように
チャンバーやマフラーは排気系というエンジンを動かすのに必要な補器類というのが正しいでしょう。

キャブレターが無いと燃料が入らないからエンジン動きませんが、チャンバー外したらどうなるかというと
エンジンは動きますが馬力が半分くらいしかでないでしょう。
そうするとチャンバーが付いて本来の動力性能を発揮できるということになります。

これは吸入⇒圧縮⇒燃焼⇒排気という工程の排気の工程に必要なパーツなんです。
排気工程には4ストなら排気バルブ、カムシャフト、排気ポートとエキパイという構成ですが
2ストではバルブの役目のピストン、排気ポート、排気デバイス、チャンバーという構成になります。

今回は2ストですから、排気工程の途中で排気ポートが開いているときに掃気ポートが開き始めます。
そして新気が燃焼ガスを追い出しながら入って来て、少し新気が排気されながら排気ポートが閉じるというタイミングになります。
もし排気ポートが完全に閉じてから掃気ポートが入るとすると掃気の流れが早いタイミングで止まってしまうので吸入される新気が減るでしょう。
すると燃焼エネルギーも減りますから馬力がでないということになるので
掃気と排気の両方が開いている時間(オーバーラップ)が重要になります。
オーバーラップが広いと燃料を排気する量が増えるので、これも馬力低下の原因になります。

ここでチャンバーの最初の役割が燃焼ガスを引張り出すことです。
その方法は前回の排気で勢いよく流れた排気ガスが移動した後の負圧を利用します。
エキパイ中のガスの流れは水道にホースをつないで水を出すようすを想像すればわかりやすいです。
同じ水圧ならホースが長い方が水が出てくるのに時間がかかりますが、短いと短時間で出てきます。
また、ホースが太いと出てくる水の勢いが弱いですが、ホースの先を絞ると水の勢い(流速)が上がります。
排気ガスの流れも同様な現象になると考えられます。
エキパイの長さは排気ガスが出口に到達する時間に影響します。
また内径は排気ガスの流速に影響しますから、
傾向としてはエキパイの長くて細いのが低速型、逆が高速型という解釈になります。

そして前側のテーパーは排気ガスを膨張させるためと、後で書きます反射波が戻ってくるためにあります。
排気ガスを膨張させる目的はガスの流れは高圧側から低圧側へ向かっていくので、排気の流れを促進させる目的の形状です。
中間に最も太くなったストレート部があり、排気管内の圧力と全長を司どります。
太くて長いのが圧力が下がり出口到達時間が長くなるので低速型
太くて短いと逆なので高速型、細くて長いのはフラットで低速型
細くて短いのはあまり見かけません。膨張が少なく全長が短いので全体的に馬力が下がるでしょう。

そして後ろ側のテーパーですが、膨張した排気ガスが壁に当たって収束するので、半分くらいはテールパイプへ抜けていきますが衝突した排気ガスが反射してエキパイまで逆戻りします。
この逆戻りした反射波が排気ポートを閉じる直前に到達して新気を燃焼室へ押し返すことで
燃料の吹き抜けを抑え、充填効率を上げるという働きをします。

当然テーパーの角度がきつい方が反射波が強く、短時間で戻るので高速型
角度の緩いのが反射時間が伸びるので低速型となりますが
角度がキツイと排気の抵抗にもなるので高速伸びが損なわれることになります。

大体上記のようなセオリーでチャンバーの寸法がエンジンの性能に影響していますが
どれくらいのスピードで行われているかというと
例えばストロークが50mmの場合
10000rpm時のピストンスピードが16.66m/s 時速60kmになります。
1秒間に166往復ピストンが動いて、2ストは166回燃焼して排気しています。

吸気ガスのスピードは125ccでキャブレター全開時ベンチュリー径φ40の場合60m/s
吸気流速はピストンスピードの3倍以上あります。
では、点火して火炎伝播速度は90m/sなので時速90kmで燃焼圧力は最大60kg/cm2
だということで、排気ポートが開いた直後にこれくらいのスピードで排出されて膨張しながら
新気を吸い込み、反射波が戻ってくるときに排気ポートが閉じるという動きです。

CIMG6468.JPG

そういうわけでチャンバーの役割を頭に置いておいて、諸元をどのように変更していくか考察するわけです。

そして現行品の寸法計測した数値に対して
モディファイ品を板金加工で形にするための形状を検討中です。

複数の円盤はパイプの内径を表し、
中央の棒がパイプの長さを表しています。
パイプのカーブはこの模型で検討して
板金の展開図に反映していく作業です。




ここまで読んで疑問に思うこともあるかもしれません。
チャンバーの鉄板から聞こえる響き音です。
アイドリング時でも1秒間に30回くらいの燃焼が行われているので
結構な周波数だと思いますが、聞こえてくる響きは、パン、パン、パン・・・という
小刻みな感じがするでしょう。
アクセル開けていくとブワアアアアーーという連続音になって音量も上がってきます。

実は、あの響きの正体は排気管内で未燃焼ガスが燃焼している音です。
排気するときは燃焼中で、完全に終了したものが排気されているのではありません。
火炎の状態で出て行き、しかも燃え残りの燃料も含んでいます。
それがチャンバーの後ろの方で溜っていき、着火する濃度になったときに燃焼して圧力を生んで
鉄板を内側から叩いて音を出しているので
エンジンの回転数より低い周波数で響きが聞こえてくるわけです。

それでも完全に燃えきらなくてCOやHCという炭化水素(ガソリンの成分)として排気ガスになって
大気中に放出されます。
NOXは燃え残った空気の成分(窒素酸化物)ということですね。
だから燃調が適切でないと排ガスは悪くなりますが、キャブレターでは適切にする限界があります。

この現象は4ストロークでも同様でエキパイの中を火炎が流れていて
マフラー内で燃焼するのをアフターファイヤー、エアクリーナー側で燃えるのをバックファイヤー
とよびます。
このことから燃焼室の圧力は排気側だけでなく吸気側にも圧力差のある方向に流れ出ていくことを
表しています。
このため2ストでは掃気の流れを後ろから排気側に押し出すようにポートに角度が付いていますし
4ストなら必ず排気ポートに向かい合うように吸気ポートが設けられるわけです。
そして、エキパイ管中の負圧が作用して燃焼ガスの流れる方向ができています。

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