定説は覆された

日々の予定はフル稼働した場合を想定していますので、飛び込みの作業を入れると
その作業分の時間が遅れてしまいます。
従いまして、余計に作業時間が取れるまでおまちいただきたいと思います。

CIMG6442.JPG

クモの巣状に亀裂が入ったマフラーが来ました。

形状が私好みのイタリヤ製品ですね。

持ち主はジャンク品を安く購入したので
最初から亀裂を溶接した状態だったそうです。

しかしこれではまた割れてしまいます。
割れる原因は排気圧の振動で板の平面部分が波打つので
途中に凹みや溶接ビードなどがあると
しなりを阻害して応力が発生するため
亀裂になってしまいます。

サイレンサーを分解してデフォームを直してからでないと溶接しても長持ちしないはずです。
このようにメチャメチャになったチタン板は板金修理不可能なので
新たにチタン板を巻いて取り替えたいところですが、取り付けステーも移設しないといけないので
相当面倒な作業になります。
持ち主の要望は、割れないようにしてもらえばよい、ということなので
分解の手間を省いて亀裂部分全面にチタン板を当てて溶接することにします。
忙しいので、また後日やります。



先日、CBヨンフォア専門店シオハウスさんが「昼飯を一緒に食べませんか」と
お誘いいただいたので近所の料亭へいきました。
ホンダOBのエンジン設計屋さんも一緒で、興味深いお話を聞かせていただきました。
1時間程度の持ち時間なのであまり深入りしないように、いくつかのエンジン談話をしました。
70ー80年代の2輪黄金期を作ってきたW辺主任研究員ですから、
当時の設計ブロックの様子が想像できる内容でしたが、その中から幾つか書きますと

未来のエンジンとして、電子制御デュアルクラッチ付きエンジンのモトクロッサーなんか面白いんじゃないかと。
7速ミッションでギヤチェンジのタイムラグが無いエンジンは現行モトクロッサーよりも素早い加速性能が得られ、マニュアルとオートマチックの切り替えもできるハイメカニズム。
RC250Mのオートマチックはバダリーニ式でオイルの発熱が問題で開発中止された経緯から
ヂュアルクラッチ式ならATモトクロッサーが実現できるんじゃないかという話。
燃料噴射も燃焼室直噴のピエゾ式インジェクターを採用し、より適切な空燃比で燃焼効率を上げたい。
2輪オール電化になる前に是非開発していただきたいですね。

内燃機の話でクランク回転角は4ストロークで720°ですが、燃焼圧力が作用するのは僅か36°
全行程の5%しかなく、残りはクランクなどの慣性重量がエネルギーとして働いでいる。
これは燃焼スピードがピストンスピードを上回っていないと馬力が発生しないという原理らしい。

そこでエンジンの回転数は低速から高速まで10倍くらいの差があるのに、燃焼スピードはあまり変わらないのでピストンが上死点から下降を始めるタイミングで最大圧力になるように点火時期を変える必要があるなど。設計屋さんからするとセオリーなのだと思いますが、それを実際に試作して確認してきた人の言葉ですから、単なる書物からの受け売りではない本物の香りがするのであります。

私は長い間、元副社長の入交昭一郎さんが本田技研で最も優秀なエンジニアの一人と思ってきましたがW辺主任研究員は違うとおっしゃられました。
東大工学部を首席で卒業した秀才が入社してくると評判で鳴り物入りで設計ブロックに配属された同氏がF1エンジンの図面を書いて、当時社長の宗一郎さんに直訴したそうです。
「フォーミュラワンのエンジン設計をやらしてくれ」と
すると宗一郎さんは「1馬力の難しさを分かっているのか!」と叱責して試しに作らせてみたエンジンが
全然馬力が出なくて入交さんの鼻をへし折ったそうです。
そして失敗したお詫びのため試作に協力してもらった部署に頭を下げて回っていたという。
学歴が高いことと仕事ができることはイコールではない。
理論だけではわからない、実際に失敗して気が付くことが多いということの表れでした。

世の中上手くいかないことの方が多いですが、同じ失敗をしないように改善をしていく過程で人間は経験を積めるのだと思いました。

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