抜き身の刀

マツダのレーシングドライバーで2輪時代は世界GP50ccランキング2位だった故片山義美選手のことを
「刀が抜き身で立っているようだ」と形容したジャーナリストがおられたそうですが
抜き身の刀という表現が一般的に広まったのは1963年上映の東映時代劇「椿三十郎」だったのではないでしょうか。
山本周五郎の小説「日々平安」が原作で主演三船敏郎、敵役仲代達矢でした。
私が生まれた年に公開された映画ですが、ラストの決闘シーンが実に興味深いものでした。

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あまりにも速い殺陣で、どのように斬ったか見えなかったので静止画で検証しました。

左が椿三十郎、右が室戸半兵衛

これから決闘で睨み合っているのですが
普通の立ち合いより距離が近いのが気になります。








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半兵衛は普通に抜いて上段に構えようとしているところですが

三十郎は左手で逆手に持ったまま抜いていることがわかります。

どう見ても胴体を斬った太刀筋ではありません。









CIMG6299.JPG
医療関係者から、あんなに血が噴き出るはずがないと批評されたシーン。

血糊をポンプで噴射させる仕掛けですが
速すぎて見えないわけです。
斬ってないんですからね。

右手を峰に押し当てて斬る技は
天然理心流かと思いましたが
殺陣師、久世竜の演技指導だということでした。

リアリティーを求める黒沢明監督の映画では、この作品以降派手な流血シーンを演出することは無くなったそうです。
天然理心流は新選組の近藤勇や沖田総司らの池田屋事件で長州や土佐の尊王攘夷派の藩士を斬った剣術ですが
狭い日本家屋で刀を振り回すことなく至近距離で敵を倒す技術でした。
戦国時代の戦では槍や弓矢が主流だったという、遺骨の傷や鎧の損傷などから日本刀が戦闘の主流でなかった説がありますが、吉良邸討ち入りや池田屋事件の史実にある通り、槍や弓矢こそ屋内では使いにくい武器だったでしょう。襲撃は大概、夜で暗闇の室内ですから、柄を両手で握って広くて明るい時間の道場でやるような剣術は実戦的でなかったかもしれません。
劇中の台詞で「良い刀は鞘に入っているものだ。」というのがありましたが抜き身の刀では危なくて近寄り難いですからね。


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