プロリンク

ホンダのリンク付きサスペンションの始まりは70年代の終盤でした。
ヤマハのモノクロスやカワサキのユニトラックは先に投入されていて
リンクサスとしては後発のホンダは天才開発者、上原研究員(当時)が考案した
ボトムリンク方式を選択しました。
キャッチフレーズは「ビギニングはソフト、ボトムはハードに」
リヤクッションのリニアな減衰特性をリンクを介することでピストンスピードが
2次曲線的に立ち上がる、プログレッシブ特性を実現しました。

PROーLINKとデルタリンクはホンダの商標ですが、最近この名称は使われておらず
クッションリンケージとしか表記されていません。
ちょうど私はプロリンク世代で、最初に乗ったホンダのモトクロッサーが最初の水冷エンジンでもあった81年型CR125でした。
そして83年にホンダ入社で秋に配属された品質管理室で車体関係の強度テストを担当していましたから
プロリンクを含むフレームやリヤフォークの単体耐久を行う業務に携わりました。
実は商標にあるデルタリンクはプロリンクの問題点を対策したデザインで
現在のCRFシリーズにも引き継がれています。
その問題点とは87年型まで続くブーメラン型のリンクの内Rが荷重によって伸びる方向に
リヤフォークの支点とテンションロッドの連結点の軸距離が変動するというものでした。
これは、リヤフォークの単体耐久で、リジッドのダミークッションに固定されたリヤアクスルに2トンの荷重をかけることで、目視でも確認できる弾性歪み(元に戻る歪み)がありました。
内側Rにひずみゲージを貼って最大応力を測りましたが降伏点に達する数値ではなかったので
問題とはされませんでしたが、市場から打ち上げられたクレームは1件だけだったと記憶しています。
そのクレームとは砂浜で走行中のCRがリンク破損したという内容でしたから
典型的な応力腐食割れの現象を表していました。
特に7075材は航空機などでも応力腐食割れ(高応力に沿って材料が腐食して割れる)の感受性が高いと言われているので、砂浜で海水に曝されたことが腐食を促進させた結果だと言えます。
そんな経緯でブーメラン型のリンクはデルタリンクにとして改良されていきました。

CIMG6284.JPG

先日、13年のリヤショックに取り替えようとした09型CRF250のクッションリンケージ

13とはリンクの距離が変わっていることに気付き、ノーマルのクッション性能を確認したくなり09のショックに戻しました。
車高は元通り高くなるのですが
初期のソフト感が出ると思い、こちらのメリットがいいかと思いました。







CIMG6285.JPG

こちらは13型CRF450のリンケージです。
寸法測定すると
リヤフォークが20mm、09より長いのに伴って、デルタリンクのピボット位置と
テンションロッド長が20mm伸びています。

ショックの取り付け長が15mm短くなっているのはアンダーブラケット部分だけ変更されており、
その目的は画像で分かるとおり
デルタリンクの角度が最初から立ち上がっています。
このことによってリヤホイールのストロークの初期から09より立ち上がるということで
減衰力が出る方向に設定されていることになります。
逆に09の方が初期がソフトということです。

ショックのバネ定数は標準で比較すると、09が5.3kg/mm、13が5.4kg/mmなので
13が固く設定されているのはリヤフォークが20mm延長されたことに対するリヤサス固さの調整だと考えられます。
リヤフォークの長さとクッションの取り付け長、そしてリンケージの寸法の3要素で構成される
プロリンク特性は上原研究員の設計の正当性を表すように
いつの間にか他のメーカーも類似した機構に落ち着いています。
違うメーカー間で特許関係の技術を使用するために、開発者どうしで取引きを行うことがあると聞きました。
当然、他の3メーカーはホンダに対して何らかの技術を使用することを許諾してクッションリンケージを生産しているものと思います。

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