スプリングシート(座金)

辞めた会社の悪口を書いているように思われるでしょうが、実は強烈な後悔の念に苛まれることがあり
あのまま勤めていたらどうなっただろうか、辞めて別の仕事をしたらどうなるだろうか、
両方を知ることはできません。
おそらく辞めないで続けていれば思ったとおりの人生になったであろう。
しかし、辞めた後の人生は全く予想がつかず分からない世界でしたので、分からない方を選んだということでした。(あの時の心境を思い出すと)
本田技研工業のすごいところを挙げたらキリがないのですが、私の所属した狭山工場について語るなら
FCM(鋳造機械課)という部署があり、鋳鉄のシリンダーブロックを内製していました。
2000ccクラスの4気筒エンジンです。
砂型鋳造したシリンダーブロックの上下面研とスリーブ加工まで一貫生産です。
ちょうど在籍中にアルミシリンダーに変わりFCMはDCM(ダイキャストマシナリー)として新に工場建設したのでした。
自社製のエンジン製作を外注に出さない、まさに技術の本田です。
外注に出すということは機密事項である図面が外部に漏れるわけですから絶対に出さないでしょう。
クルマのデザインの要であるボディーパーツ、ボンネットやルーフ、ドアなど主要な外板も全て内作です。
定格荷重3000トンのプレス機で一発成形される鉄板は新日鉄と共同開発した本田特製のSPCCです。GA材(ガルバナイズドスチール)の溶融亜鉛めっき鋼板は本田専用ラインを新日鉄に作ってあります。
クルマの部品は1台分1万点以上あるのに、その全てに部品番号と図面が存在し、部品メーカーとの取り決めも詳細に行っており、一日2000台生産能力があるラインのタクトはおよそ1分。
1分間に1台ずつ完成車が生まれてくるスーパー工場なのです。

部品メーカーも凄いですよ。4輪ですから足回り部品は一日で8000個生産しないと間に合いません。
ホイールやハブ、ブレーキにサスペンション。毎日8000個ラインサイドに届けなければラインがストップします。本田の取引メーカー=超一流ということです。

私が最も不満に思ったことは、部品メーカーへ行くと品質課の課長は製造を経験したプロ、
すなわち自社製品の製造に従事したベテランなのに対し
本田の品質管理は製造の経験に乏しいか、全くの素人も多いです。
取り決めした品質基準書や工程表のような書類を管理して、取引先に遵守させるのが仕事なので
製造の経験が無い人でもできるということです。

もっともトラブルが発生した場合は原因を究明して対策しないと市場で問題発生しては遅いので
部品のバイヤーの立場からすると主導権をもって解決しなければなりません。

そんな品質管理屋しかやらせてもらえない職場では、人の失敗の後始末的仕事ですから、他の人に任せて私は辞めさせていただいたということです。(フー、お分かりいただけたかな)


CIMG5708.JPG

今回はサスペンション屋のブリッツ・シュネルさんからの依頼です。

うちはマフラー専門ではないですからね。
注文がマフラー中心になっているだけで
作れるものなら何でもいいんです。

エー、上がノーマルスプリング

下はブリッツさんで取り寄せたハードスプリング。
このショックに適合しているわけじゃないので、このまま取り付けは不可能です。

コイルの内径が大きくて座金ガガタガタで取り付きません。
プリロードはネジ式でなくカムを回す方式なのでスプリングの自由長が違うとプリロードが掛けられません。

CIMG5709.JPG

そこで、ハードスプリングに合わせた座金を作りました。

スプリングシート上下と長さ合わせのスペーサーです。










CIMG5710.JPG

スペーサーはアルミの無垢なので、軽量化のため穴加工で肉抜きしました。

全て私のオリジナルデザインです。

なに、カッコ悪い?
それじゃ、もっといいアイディアを出してくれんかの。







CIMG5711.JPG


部品3点加工でハードスプリング取り付け可能になりました。

スプリングコンプレッサーで縮じめて、アンダーブラケットをねじ込めば組立て完了。

世の中に無いものを自分のデザインで作れれば
他人の後始末業務をやっているより
精神的に幸福なのだと思いたい。
(給料が全然違うからね、後悔先にたたず)

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