クリエイション

「人の真似をするくらいなら、会社が潰れた方がマシだ」 本田宗一郎さんの言葉でしたね。
一見誇り高いクリエーターらしい考えだと思われますが、はたしてそれだけでしょうか。
現在のガソリンエンジンは19世紀にドイツ人技師オットーがレシプロエンジンを発明しなければ存在しなかったわけで、そのあとに改良を加えて生産されてきたエンジンは物真似を重ねたことによって生まれてきたわけです。
もちろん、物真似の上には独自の発想や理論があって発展してきたといえますが、そもそも近代的な技術の基となる学問が、他人の考えだしたことの受け売りに過ぎないと誰かから聞きました。
物作りをする場合、他人が作ったものを一所懸命観察して真似をする場合があります。
これは自分が独自に形状を考えたり、作り方を考案できなかったことを表していて、とてもクリエーターのやることではないと考えられるのです。
世の中には特許や意匠権という法的に知的財産を守る制度があって、出願者に対して無断でデザインや製法を真似てはならないとしています。但し、それは営利目的で、出願者に対して経済的不利益を与える場合に当てはまることになります。
美術品や音楽、書物などには著作権ということで無断で真似することを盗作と呼びます。
物作りをする人はこれらに抵触しないために、他人の製作物を参考にすることなく自分の感性を信じて仕事をしていかねばなりません。
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先日作ったチャンバーは、このようなサイレンサートとセットで注文されたものです。

お客さんによると弊社オリジナル商品ではなくて、デザイン変更を希望されたのでした。

どうやら別機種の社外品マフラーに気に入った形状があったらしく、真似して作ってほしいという依頼でした。
過去にも、どこかの社外品のカタログ写真を送信してきて「これと同様な形で作ってほしい」と頼まれたことがありました。
その場合は、「そのカタログの商品を注文してくれ」と返事をしました。

今回の場合はそもそも機種が違うので、世の中に存在しないものを頼まれているわけです。
送信されたカタログの写真は見ましたが、4スト車のカタログなので2ストのマフラーとは大きさも形状も全く違うので、似せて作るのは困難だと返答しました。
しかし、やりもしないで難しいという理由で、やらなかったら今までの仕事は何だっただろうと考えてしまいました。簡単にできたものなど無いはずなのに、一個しか作らないのに型を作っていては効率が悪いということも今までどおり。面倒な仕事でも頼まれているうちが花だという考え方もできます。
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CRM250サイレンサーはラインナップ品ですが実車はありませんので、寸法変更した場合は取り付けの確認ができません。

もし取り付けに問題があった場合は、オリジナル品と交換していただくか
実車お持込みしていただいて改造して取り付けるという処置を取らせていただきます。

4スト車のデザインなのでサイレンサーボディを大きくする必要がありました。
そのため内側がタイヤに擦るか、外側がサイドカバーに触れてしまうかが問題の部分ですが、実車が無いので分からないで作っております。
一応パイプの差込み位置とマウントボルト位置は治具により合っているでしょう。
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エンドパイプは二股になっていて、出口穴2つです。
性能的にはメリットはないでしょう。
手間が掛かるだけですね。

自分で考えたデザインでもないので
クリエイティブとは縁のないルーティン業務だと考えています。







個性というのは1個しかないことを指すもので、自分の顔みたいなものです。大量に出回ったものは個性ではないという考えです。
優れたデザインであれば大勢の人に受け入れられるわけですが、同類の人が増殖していくということでもあります。
大勢の人と喜びを共有するか、自分だけ欲しいものを手に入れるか、そのために何をしなければならないか、人間の欲求と労働と技術の進化といった壮大なスケールで、終わりのないテーマに挑んでいる気がします。

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