空冷エンジン

今更空冷ですか、と笑う人がいると思いますが何れ分かる時がくると思いますね。私が会社員だったころは、ようやくCADAMが導入され始めたころで、設計は間違いなく製図板に紙と鉛筆、定規やコンパスで描かれたものでした。

そうです、設計図は人が手で描いた絵画のようなものだったのです。当然上手い人と下手な人で差がでますね。図面が絵画と違うところは、製造者が見ることによって実物を作る指示書になるということです。

そんな人が手で描いた図面を元に鋳造屋さんや機械加工屋さんの手加工によって作られた物たちです。

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このエンジンの時代に少年だった私はレース場で憧れの目でみていたと思いますが、ちょっと小さいヤマハの黄色いツインショックのYZ80に乗っていました。

こんな美しい造形が出来た当時の設計者は35年も後まで乗り続けられると想像したでしょうか。

メーカーとしては不本意ですね。過去の物は古い技術で最新の物こそ先端技術でありますから、新しいものが売れることがメーカーの業績になります。

乗ったら性能差は歴然なのですが、皆が新しいの乗っていたら自分だけ有利なわけありませんので、結局昔と同じように上手い人が上手い、速い人が速いことに何の違いも無いのです。

だから当時の人たちが当時の体験や興奮を再び味わうには当時のアイテムが必要だということです。維持するのに、お金が掛かるとか手間が掛かると言われますが、現行車に乗っても同様に金と手間は掛かります。現行車でお金と手間が掛からないと思っている人は、たぶん乗りっぱなしなんじゃなかなと思います。

まあこんなご時勢ですから出費は抑えたいと考えるのが庶民の願いです。新型は高いお金払って買っても数年後にあっさりモデルチェンジされてしまって、裏切られてしまいますが旧式は永遠にそのままですから、いつまでも色あせないパートナーに成りうるでしょう。

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我社に訪れるお客さんは、ここの商売柄のせいか古いマシンを維持している人が多いです。

新車から持っているのでなく中古で手に入れて手間をかけている人たちです。

やはり、家電やクルマのように完成されたものを買って使うだけの行為に魅力を感じていないといいますか、便利なものに満ち溢れた時代ですから、不便なことの楽しさを追求している人が多いかもしれません。

泥のMXなどは正に、わざわざ走りにくい路面でスピードを出すみたいな一般常識から外れた行為が不便さを楽しむという意味で共通しているかもしれません。

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私は古いマシンを泥だらけにして元どおりに直している時間が取れませんのでオンロードの空冷エンジンを手に入れましたが、キャブレターも点火時期も狂ってきますので、時々調整しなければならない不便さが楽しいなと思います。生涯大切にしていきたいと思うカワイイ奴です。

それにしても美しい造形です。オートバイは空冷のフィンがあることが芸術性を高めていると思います。しかも放熱性能を左右するわけですから、こんなエンジンを設計して世の中に残した技術者は幸せでしょう。自分の才能をそのまま形に残せるわけですからね。

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エンジンがこのように水冷化されたころから急速に効率を求める時代に突入していきました。

エンジンは熱エネルギーを運動に変換する装置ですが、熱が金属部品の膨張という寸法変化を生み出し、問題を起こすことが設計を悩ますことになりました。

シリンダーは外部から冷却することができますが、ピストンはガソリンやオイルによる冷却だけが頼りなので、熱膨張の違いでエンジンの効率が変動してしまいます。そこで、熱的に安定させやすい水冷エンジンが主流となってしまいました。

オートバイエンジンらしい冷却フィンは時代おくれの過去の産物として葬られてしまう運命なのか?

私はそうでもないと思っています。CDや磁気テープなどの記録は20年くらいが寿命で、バックアップを取っておかないといずれ消失します。それに比べ紙の記録、古書などは何百年も残っていますし、石に刻まれた文字は半永久です。水冷エンジンはウォーターシールが数年で劣化しますので部品交換しなければ水漏れで走行不能になります。ディスクブレーキもシールの固着、フルードの水混入などで、10年経過するとオーバーホールが必要になります。

空冷エンジンやドラムブレーキはそういう劣化する部分が少なく、簡単なメンテナンスを怠らなければ水冷、ディスクブレーキ車よりも保存が楽だといえるでしょう。従って後世まで残る可能性があるのは現行車より空冷エンジン車ということになります。

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