2012年10月アーカイブ

年齢を理由に競技生活を止める人が多い中、69歳でも現役ライダーとして走っておられる方がいます。只オートバイに乗っているわけではありません。MFJのエリア選手権と関東ロードミニ選手権のモタードクラスに参戦中なのです。

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80年代に有名だったヤマハ系名門クラブの武蔵野ライダース所属、林ヒサシさんのYZ426改。

 

練習中にダートセクションで転倒して、マフラーが潰れてしまったので修理を頼まれたのが一ヶ月前でした。そのときは、変形が激しかったのと、社外マフラーの修理に手間を掛けている時間が惜しいということで、お断りしたのでした。

そうすると林さん自ら、マフラーが取り付く程度に修理して来られて、改めての依頼です。

ダメ元で捨てる前にもうしばらく使いたいということで改造の申し込みです。

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リヤタイヤが160サイズなのでマフラーの内側にタイヤが思い切り当たります。

ステーにカラーを挟んで外向きにしても、前半分は当たってしまいます。

そこでジョイントパイプのカーブを変更して、マフラー全体を外に出す方向で改造します。

 

 

 

 

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ジョイントパイプの後方を20mm外出しに変更するためφ50.8のチタンパイプを輪切りにして繋いで作りました。

 

 

 

 

 

 

 

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そのままだとサイドカバーが当たっていますので熱で溶けてしまいます。

そこで、サブフレームのステーを変更してサイドカバーの下側が外に開くように改修しておく必要があります。

 

 

 

 

 

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エキパイは音量規制に合わせてバイパスパイプを追加しました。

本来の排気の流れの一部をバイパスに通すことで排気ガスの圧力と速度を低減する目的です。

圧力波が乱れることによって出力特性がマイルドになる効果があり、急激な立ち上がりを緩和して乗りやすくなるでしょう。

 

 

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ロードレースやモタードは年齢別などという生優しいクラス分けはありません。

遅くなって現役で通用しなくなったら止めておけばいいだけです。

「いい年していつまで乗っているんだ」というお年寄りがいるかもしれませんが、乗れる人に対しての妬みにしか聞こえません。

余裕があってオートバイを楽しんでいるわけではなく、建具屋の仕事も現役で出来ているからこそレースに情熱を傾けられると思います。

林さんのように、体に刺激を与え続けることが最高のアンチエージングに繋がっているのではないでしょうか。人間は動かなくなったら衰えは早いですが動き続けていれば高齢でも元気でいられるものです。

 

既に10月も後半になってしまいました。時が経つのが早いですね。 CIMG1876.JPG

前半はこれを作って終わりました。

同じ物を連続して作ることは、滅多にありません。

このように4個揃って撮ることも珍しいのです。

量産というのは連続して作るための治具や金型を製作して機械化された設備で行うことですが、これは鉄板に罫書いて鋏で切って作っていますのでハンドメイドを繰り返しているわけです。

 

 

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昨日から作っているのはこれです。

17:00時点でこの状態ですから、完成は明日になります。

鉄板の状態から完成まで15時間くらいかかります。

このあと研磨屋に持っていってクローム鍍金を頼むのですが2往復分の運送代は貰っていません。外注の実費だけいただいてますので、鍍金はNOマージンでやっています。このように曲がった形状は研磨し難いため鍍金代が高くつきますね。

このあとも待ったなしの仕事が続きます。特にレース関係のマフラー作りは日程が決められていますので予定変更してでも間に合わさなければなりませんから、精神的重圧がかかります。

そして、今週末21日はレースデイですね。クラブマンMXは軽井沢、ダートACTSのビンテージMX、

全日本MXは最終戦です。我社の製品を使って全日本を闘っている国際B#9島崎選手はIBOPENでランキング5位のままA級昇格を賭けたレースになります。

A級昇格が果たせたなら、これまでの人生、掛けたお金や苦労が報われるというもの。観戦に行きたいのは山々ですが、残念なことに日曜の朝は自治会の掃除があり、観戦に行けません。日頃、騒音を立てて仕事していますので地域の行事にも協力しないようでは、只の変人扱いされてしまいます。

仕事だけしているわけにもいかないのですよ。来月は自分のレースもありますし、ゆっくりしている場合ではありません。

iPS細胞や素粒子ヒッグスが発見される時代に私はいかに低レベルな仕事をしているのだろうと、恥ずかしい思いでありますが、およそ20年前に本来の労働の姿というものを追求した結果が今の状態になってしまいました。

世の中に自分の作った物を残したいと思ったときに、自動車や建築物ですとデザイナーだけの製作物のように評価されますが、全然違いますね。新機種1台100億円のプロジェクトには資金を融資する銀行から始まって、試作、開発、製造など何百という部品メーカーとその下請けまでいれると何千人の人が係っているか分りません。これで一部の開発者の作品のように言われましても違うでしょう。目的は大勢のお客さんの欲求を満たし、事業に携わったひとの利益とすることです。自分の個性を抹殺して組織のために働くか、自分の責任だけで個人商店を営むか、人生の岐路の選択がありました。

自分で考えてやっていることですから、苦労は苦労でなくなりますね。 CIMG1869.JPG

パイプをこの状態に持ち込むことができれば

あとは溶接して接合するだけです。

これは3種類のパイプを水圧成型して所定の位置で切断し、これが重要なのですが接合面を段差が出ないように擦りあわせします。

接合面がピッチリ合わさっていれば溶接が上手くいきます。

これがいい加減だと接合不可能になりますので重点管理項目です。

 

 

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全体の取り回しは治具にセットして隙間関係を守りながらパイプを繋いでいきます。

段々完成に近づいてくると苦しみから解放されるように気分が晴れやかになります。

 

 

 

 

 

 

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これはサイレンサーもセットの商品なので昔の由緒正しいスチールサイレンサーを作ります。

鉄板を巻いたパイプと型押し成型した蓋が4つで2台分。

 

 

 

 

 

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テールパイプ差込側のパイプと蓋は先に溶接しておいて

パンチングにグラスウールを巻きつけて差込ます。

エンドパイプは排気を下向きになるよう曲げておきます。

 

 

 

 

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サイレンサーも治具で、ひねり具合とステー溶接位置を統一します。

オートバイは車体レイアウトがコンパクトに出来ていますので、サイレンサー位置が数ミリ違ってもベストな取り付けが出来なくなります。

最初に実車で位置決めした要件を治具で抑えることが、複数作る場合の必須になりますので治具製作が重要です。

しかし、使わない治具は5年くらいを目処に廃却することにしています。需要がないものをいつまでも管理することが無駄になりますし、次々に新作したものが溜まってしまいます。

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チャンバーとサイレンサー、取り付け金具など2台分ですが1週間でこれだけしかつくれません。営利目的ではないことがお分かりいただけるでしょうか?

報酬はお客さんとの交渉によるものなので公表しませんが、だいたい純正部品の量産品並みと考えてください。

これで世の中に自分の作品が残るのであれば、大きな組織に属しているより気分が良好ということになります。

 

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全日本MXレディースチャンピオン益春菜選手から挨拶状をいただきました。

律儀さというか、社会人らしい振る舞いが王者の風格を感じます。

05年ころにCR85チャンバーを使っていただいて全日本で優勝して見せてもらったことが忘れられません。

4回チャンピオン獲って、絶頂期かと思われるときに衝撃の引退、そしてオートレーサー研修生へ転向しなければならなくなった最大の原因は、MFJでレディースチャンピオンを獲っても先が開かれていない現実にあっただろうと思います。実力がある選手が、より高く評価してもらえる世界へ進出していくことは当然のことです。おそらく大変悩んで決めたことでしょうから、オートレーサーになって成功してもらいたいです。

この人が唯のレディースライダーではないことを見せ付けられたレースは05年の関東選手権IBクラスでした。IB2で3位入賞した後のIBオープンで2コーナーあたりで転倒し手首骨折でリタイヤしました。

後でコースを見にいったら大きなコンクリートの塊が落ちていました。当時のオフビレは散水が無く、埃の煙幕で路面が見えないときにフロントタイヤがコンクリートのガラに乗り上げた格好でした。

そして骨折も治っていないうちに全日本関東大会に出場したときは主治医がパドックで局所麻酔を打ちながらの走行でしたがレディースクラスは、さすがに3位くらいだったと思います。

また、全日本IBで予選通過したレディースライダーは3人知っていますが、広島で益選手が通過した予選レースも見ていました。

当分、これだけやってくれるレディースライダーは現れないと思うと同時に、先にオートレーサーになったMXライダーたちと競い合ってくれると面白いかなと、そんな気持ちです。