タンクの話

埼玉県にロードレーサーのアルミタンクを作るメーカーがありました。タンク作りが専門ではありませんが自動車の主に車体関連の部品を試作、量産できる会社です。

ロードレーサーの、しかも全日本やWGPの契約ライダー専用で、空気抵抗を減らすためニーグリップや肘の収まりがいいように、契約ライダーの体型に合わせて型取りされた形状で作るため少量だけ生産されます。

その製法について聞いたことがありました。タンクのモデルは粘土で成型して、モデルをセメントに埋めてメス型を取ります。そのメス型に離型材を塗ってセメントを盛ってオス型を取ります。そして、このセメントの型を使ってアルミ板を大型のプレス機で絞って、タンクの部品を成型します。上型と下型は別々に成型して溶接すればタンクが完成するということです。

弊社の場合は大型プレス機がありませんので、同じような手法はできません。簡単な形状に板金加工したアルミ板を溶接で繋いで組み立てますので、成型できる形状は制約されますので、得意な仕事ではありません。どうしても形状変更や容量変更が必要だというお客さんには、その必要性の度合いを聞いてからなるべくお断りするようにしています。それはタンクの組み立てに非常に時間が掛かるため、さらに仕事が遅れてしまうことを懸念するからです。

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現行車は全て燃料噴射になっていますのでガソリンを供給するポンプが内臓されています。

キャブレターの場合は燃料コックだけで済んだのですがFI用のタンクはこのような大きなフランジの製作が必要になります。

これはφ130の丸棒から削り出しますので大幅なコストアップです。

自動車業界では常識なのかもしれませんがインジェクターで燃料を高圧にして噴射するのは分りますが、燃費がリッター30km以上走るエンジンですから噴射量は極微量だと思うのです。それなのにこのような大きなポンプでガソリンを圧送しなければならない理由が理解できません。供給量はあくまでキャブ車以下のはずです。

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お客さんの依頼内容はタンク容量を15L以上にしたいということで、可能な限り大きくしました。

大容量のタンクでガソリンを大量に運ぶより軽いタンクで給油の回数を増やせばよいのでは?という質問が愚問でした。

このクラスに限らず、長距離走るライダーにとっては頻繁に給油することがわずらわしいだけでなく、出先でスタンドまでの距離が分らないときにガソリン残量が多いことが安心に繋がるということを、オートバイでツーリングした経験がある人なら理解できることだと思います。

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セロー250ですが、タンクの両側はシュラウドでカバーされていますので、横幅を増やすには限界があります。

従って上方向に容積を稼ぐ形になっています。角ばって見えるのも、3次元における限られたスペースで最も容積が大きいのは球体より立法体であるということで丸みを極力無くしています。

 

 

 

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非常にハンドル切れ角が深いため、ハンドル操作に影響が出ない最大限度の形状がこういうことになります。

ガソリン満タンで17Lを達成しましたので、仮にリッター30km走るとすると航続距離510kmになります。

250クラスのオートバイとしては最大級の数字ではないかと思います。

製作時間は40時間といったところです。金額は時給ウン千円で計算してください。

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