点検整備 CRF250

脚の怪我で暫らくの間、MXはできません。特に問題はありませんが、中古マシンのため、エンジン周りを分解点検しておこうと思います。 CIMG0750.JPG

全バラにして、部品一つずつ点検します。

前オーナーが自動車整備士ということもあり、整備状態は良好のようです。

シリンダーヘッドとバルブ周りのカーボン除去、バルブシート擦り合わせ程度で大丈夫だと思います。

 

 

 

 

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OH!ヒンソンのクラッチアウターに交換されています。こういう中古マシンは歓迎です。

ノーマルのクラッチアウターはダイキャストなのでクラッチプレートで叩かれて摺面に段付き磨耗が起こりますが、ヒンソンは硬い材質で削り出しなので耐久性がUPします。

よって部品交換頻度が少なくて済みます。

 

 

 

 

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クランクシャフトの振れもはかってみます。

規定値はL(テーパー側)0.05以内

R0.03以内ですが

これはLが0.03、シャフト部分で0.01以下、Rが0.01以下ということで全く問題ありません。

 

 

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このクランクシャフトを見て、すごいなと思いました。コンロッドスモールエンドの首下とクランクウエブの隙間がこれですよ。

クランクウエブの角に逃がし加工が施されていますが、鍛造の金型に成型された形です。外周や側面の殆どが未加工の鍛造肌のままです。クランクピンの圧入基準と肉抜き穴だけ加工されているにすぎません。

これは精密熱間鍛造という製法で、厚み公差±0.15という精度が保証されています。茶色は銅鍍金で細かい傷を埋めて表面を滑らかにして、オイルの撹拌抵抗を軽減するものです。

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クランクピン径はなんとφ30です。コンロッドビッグエンドのクリアランスを一定とするとピン径が大きいほどコンロッドの横剛性が上がり、軸受けの摺動面が広がり、耐焼き付き性が向上します。

ピンとシャフトがオーバーラップしていますので圧入は内側からしか行えません。

ウエブ外周の加工面は大荷重で圧入するための基準面となります。外径がスモールエンドのギリギリまで拡大されている理由は、ビッグサイズのピン圧入によって外周が歪まないための肉厚を確保するためです。

L側シャフトセンターからオイルが圧送されクランクピン横穴からビッグエンドを潤滑してピンの反対側ドレンから排出されるようにオイルラインが加工されています。

このように部品を観察していると、設計者の思惑が推察されて非常に興味深いものです。同時に、このような精密な機械加工品を安価に手に入れることができる喜びも感じずにはいられません。

 

CIMG0755.JPG燃焼室と吸排気バルブの堆積物を除去して、バルブシートとバルブフェースの当たり具合を、光明丹を塗布して確認しています。

バルブの擦り合わせは排気バルブのみ行いました。CRF250の吸気バルブはチタン合金(推定材料Ti6AL4V)を使っていますが、酸化処理という、チタン中に高濃度に酸素を固溶させて硬度を高める熱処理が施されています。

64チタンは調質した鋼に匹敵する強度を持っていますが、耐磨耗性については問題があります。そこで、酸化処理による硬化層がバルブとしての性能を実現できるわけですが、50μmほどの硬化層深さのため、擦り合わせによって酸化チタンが失われることを問題としていますので、バルブシートの修正はシートカットで、吸気バルブは新品交換が基本となります。今回は当たり面に問題なかったので、このまま組みたてます。

では、排気バルブが耐熱鋼(推定材料SUH35)である理由ですが、チタンの酸化限界温度が700℃付近で、それを超えると急激に強度が落ちます。排気ガスの温度は800℃に達しますが、鋼材の酸化限界温度は850から1050℃なので、高温に曝される排気側は信頼性の高い耐熱鋼を選択したのでしょう。別機種では排気バルブ用チタン合金TIMETAL@1100を採用している例もありますが、コストと信頼性で現在の仕様に決まったと考えられます。

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カムシャフトも目視点検ですが、亀裂や摺動面の磨耗が無いかチェックします。

従来のカムシャフトはFC(鋳鉄)製が当たり前でしたが、レーサーモデルでは鍛造品を素材としています。目的は軽量化ですが、これも中空シャフトになっており非常に肉厚が薄くできています。そのため材料に強度がないと、変形したり亀裂が入って問題が起こります。炭素鋼かクロームモリブデン鋼で調質(焼きいれ、焼き戻し)により靭性を持たせてあります。

カム摺動面の耐磨耗、耐かじり性を向上させるためLCN(塩浴軟窒化処理)という熱処理を行い、窒素と炭素を浸透させ硬化層を形成していますので、油膜が適正であれば消耗は殆どありません。

従来のカムギヤはフランジにネジ止めでしたが、これは軽量化のために圧入されているだけです。急加速、急減速を繰り返す運転次第でカムギヤの圧入がスリップしてバルブタイミングがズレてしまうトラブルが懸念されますので、カムシャフトとギヤの境目にマーキングして確認することをお勧めします。

このようにエンジン部品の多くは塑性加工と冶金学を駆使した工業製品の塊なので用途と品質特性を踏まえた見地で確認作業を行っています。

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